女性ポートレートの巨匠ヘルムート・ニュートン

ファッションとフェティッシュの融合 ヘルムート・ニュートン(1920年 ベルリン生まれ)は、女性ポートレートを得意とし、フェティッシュをファッションへと確立したファッション写真家である。ヨーロッパ上流階級の退廃的な雰囲気と潜在的な暴力、エロティシズムを感じさせるスタイルで、60年から70年代にかけて各国のヴォーグ、マリ・クレール、エル、プレイボーイで活躍した。「ファッション写真を、欲望を刺...
- 2009年01月09日

パブリックアートの第一人者 ダニ・カラヴァン

環境彫刻の先駆者 ダニ・カラヴァン(Dani KARAVAN、1930年テル・アヴィヴ生まれ)は、比類ない規模の環境彫刻(周囲の環境と調和する大規模の立体作品)を手がけてきた稀有な芸術家として、世界的にその名を轟かせている。建国前のイスラエルの地に生まれ、フィレンツェやパリで絵画とフレスコ画を学び、マーサ・グレアム、ジャン・カルロ・メノッティらの舞台美術を担当。そしてイサム・ノグチやブラン...
- 2009年01月09日

美術館屋上に設置されたアート?ホテル?

絶景4つ星ホテル パリの美術館「パレ・ド・トーキョー」の屋上に現代的な内装を施したワンルーム形式のホテルが期間限定で運営されている。「ホテル・エバーランド」と呼ばれるこの施設は、もともとスイス人アーティストのダニエル・ボーマン氏とサビナ・ラング氏が制作した展示作品だ。2006年6月から約1年間はドイツのライプチヒ美術館に設置され、2007年11月パリに移設された。箱型を見ればわかるように、...
- 2009年01月09日

英国庭園に浮かぶ胎児?!

サザビーズが贈る近現代彫刻展示会 「庭園に浮かぶ胎児」。合成の画像だろうか。そうではない。これは、9月9日から11月2日までの間、イギリスの中部に位置するダービシャー州ベークウェル近郊のチャッツワース庭園にて開催されている「Beyond Limits」というユニークな近現代彫刻を集めた展示会の様子である。この展示会は同国のオークションハウスサザビーズによるもので、今年で3回目の開催となる。...
- 2009年01月09日

企業家とアート—ブリヂストン美術館2

中核を成す西洋美術コレクション 日本有数のクオリティを誇るブリヂストン美術館だが、身近にありすぎるゆえに訪れる機会を得なかった、という向きも多いのではなかろうか。そのコレクション内容を改めて知れば、足を運ばなかったことを後悔するに違いない、というほどの充実度である。  コレクションの中核を成し、ブリヂストン美術館のカラーを決するものともなっているのが、フランスの近代美術だ。コローやマネを...
- 2009年01月09日

企業家とアート —ブリヂストン美術館1

社会に貢献する、名経営者の美術館 これまでに例をみなかったような類の不祥事の発覚が相次ぎ、とかく企業の倫理、社会的責任といったものが問われることが多い昨今。経営者の顔が見えない、実態のよくわからない企業が現れては消えする中、戦後日本経済の黎明期を支えた名経営者たちの品格に、学ぶべきものを見出す場面も多くなっている。そんな大人物のひとりが、日本が世界に誇るタイヤメーカー、株式会社ブリヂストン...
- 2009年01月09日

写真家 長倉洋海の笑顔への想い

生まれたままの心を伝える 濡れた水晶のように輝く子どもたちの黒い瞳。写真家 長倉洋海はこれまで世界30ヶ国を訪ね歩き、数多くの子どもたちと出会ってきた。中米エルサルバドルやアフガニスタン、アマゾン、そしてシルクロード。どの地においても、ファインダーが切られたその先には子どもたちの笑顔があふれている。彼は勤務していた通信社を辞め、フリーカメラマンとなった1980年以降、世界の紛争地を中心に精...
- 2009年01月09日

メルボルン アートフェア 2008

80を超えるギャラリーの宴 南半球最大のアートフェア メルボルンアートフェアが、2008年7月30日〜8月3日の4日間、盛大に催された。同フェアは1988年にその歴史の幕を開け、以来2年に一度、メルボルンにある世界で最も古い展示場の一つ、世界遺産 ロイヤル・エキシビジョン・ビルにて開かれ、著名な現代アーティストが誕生する舞台にもなってきた。同アートフェアは、オーストラリア内外の都市、オーク...
- 2009年01月09日

知られざる画家ハンマースホイ

虚無と安堵が織り成す静謐 ヴィルヘルム・ハンマースホイ。その名を聞いてピンと来る日本人は多くはないだろう。19世紀末のデンマーク を代表する画家で、20世紀のドイツを代表する詩人・評論家のリルケに「この時代に知るべき芸術家はロダンと ハンマースホイしかいない」と言わしめたほど、生前は高い評価を受けていた人物だ。  彼は1916年に咽頭癌で死亡後、第一次大戦の混乱と前衛芸術の台頭ととも...
- 2009年01月09日

アネット・メサジェ:日本初の大規模展

キュートで残酷な作品群 「つながったり分かれたり」。写真のインスタレーションのタイトルである。ふんわりとした柔らかい印象を受ける一方で、それと同時に奇妙な不気味さをも覚える。  ドイツで5年おきに行われる大型の現代アート展「ドクメンタ」で発表され、大きな反響を呼んだ。作者はフランスの現代美術を代表する女性アーティスト、アネット・メサジェである。彼女は狂牛病で多くの牛が死んだ事実に触発され...
- 2009年01月09日

野外国際芸術祭の胎動

越後妻有アートトリエンナーレ開催に 向けた祭り 越後妻有地域(新潟県十日町市、津南町)の里山を舞台に3年に1度開催される世界最大の野外国際芸術祭、越後妻有アートトリエンナーレが来夏第4回目を迎える。それに先駆けた催しとしてこの2008年の8月の1ヶ月間を「2008夏 越後妻有 大地の祭り」と称し、過去の作品の展示やワークショップ、イベント等を開催中だ。来年に向けて動き始めている集落やアー...
- 2009年01月09日

「ジュリアン・オピー」アジア初の大規模個展

約70点もの近作が集結 現代アートに触れても、『さっぱり意味のわからないガ ラクタだ』、『こんなものマンガじゃないか』と、硬直し た思考でしか受け止められなかった頃とは打って変 わり、日本でも柔軟に現代アートを楽しむ土壌が醸成 されてきたのがここ10年ほどのこと。特に、ここ数年の 現代アート人気の高まりには目を見張るものがあり、 人気作家が大規模な個展を開催することも多くなっ ...
- 2009年01月09日

非ナルシズムとしてのソフィー・カル

愛人の別れ言葉をアートに 2008年1月1日から6月30日までフランスでは一部の美術館・博物館・史跡の常設展の入館料を無料にする試みが行なわれたが、中でもフランス国立図書館(リシュリュー)のラブルスト閲覧室で開催されていたソフィー・カルによる『Prenez soin de vous』展は注目に値するものだった。タイトル『Prenez soin de vous』は、「ご自愛下さい」といった意...
- 2009年01月09日

マグナムが見つめたパリ

世界有数の写真家達が切り取るパリ 多くの小説家や画家、映画監督などあらゆるジャンルの芸術家たちにインスピレーションを与え続けてきたパリ。ある人はその姿をロマンティックな言葉に置き換え、ある人は華やかな街の片隅で生きる市井の人々をキャンバスに描いてきた。ロバート・キャパの発案によって生まれたマグナム・フォトの写真家たちもまた同じようにパリを撮り続けている。  たとえばキャパによるこの写真は...
- 2009年01月09日

カルティエ現代美術財団、礎をなす絆

『セザール/ジャン・ヌーベルによる選集』展 パリ、カルティエ現代美術財団にて『Cesar/Anthologie par Jean Nouvel』展が、10月26日まで開催されている。20世紀を代表する彫刻家セザールの没後10周を迎え、カルティエ現代美術財団と15年に及ぶコラボレーションをもったセザールへのオマージュ企画展だ。展覧会タイトル『セザール/ジャン・ヌーベルによる選集』が示すように...
- 2009年01月09日

『ゲイ・プライド』、虹の反旗に染まるパリ

ゲイ達の『誇りの行進』 シンボルの虹色の旗が街頭にあふれる、通称『ゲイ・プライド』は、その公式名称の通り、すべての性的な方向性とアイデンティティーに対して、自由と平等を推奨するパレードだ。通常のコミュニティー同様に、LGBT(レズビアン、ゲイそしてバイ・トランスセクシュアルの頭文字)のコミュニティーの存在の権利を要求する示威行動である。1969年にNY市で起こった『ストーンゥォールの暴動』...
- 2009年01月09日

いにしえの芸術を現代アート感覚で解釈する

ヤン・ファーブル『変貌の天使』展 ルーヴル美術館と現代アートとの新しい関係を築く 政策の一環として、3年前から開催され、恒例行事にな りはじめた『Contrepoint』展。美術館側の要請に応じる アーティストは、ルーヴル美術館で自分がインスピレ ーションを与えられる空間や作品、あるいは神話的物 語をまず選びだし、それを源泉に、自由に作品を提示 していく。まさに現代アートが歴史に食い込んで...
- 2009年01月09日

芸術都市パリの100年

モネ、セザンヌ、ルノワールが愛したパリ ルーヴルやオルセーなど世界に名だたる美術館を持つフ ランス。実は日本とフランスの交流には歴史があり、1858 年に日仏修好通商条約が締結されて以来、文化的・経済的 に親密な関係を続けてきた。2008年の今年は150周年にあ たり、その記念として東京都美術館で開かれているのが 『芸術都市パリの100年展』だ。その名の通り、パリをテー マにし...
- 2009年01月09日

『マリー・アントワネット』展/グラン・パレ(パリ)

古今マリー・アントワネット旋風 マリー・アントワネットと言えば、池田理代子原作の歴 史大河マンガ『ベルサイユのバラ』、その原作から生ま れた宝塚歌劇の公演、一方で、ツバイク著『マリー・ア ントワネット』に至るまで、認知度の高さはお墨付きで ある。オーストリア・ハプスブルグ家に生を受け、フラ ンス・ブルボン家に嫁ぎ、ルイ十四世が建造した絶対 王政の象徴でもあるベルサイユ宮殿に生きる華麗。だ ...
- 2009年01月09日

デザインで時代を探るということ

21世紀の希望を共有する斬新なイベント 21世紀に生きる人々はこれからどこに向かうのか……深くて大きなテーマに真っ向からアプローチしたのが 『XXIc.—21世紀人』。東京ミッドタウンにオープンした21_21 DESIGN SIGHT の第3回目の企画展だ。本展のディ レクターは三宅一生。彼は言う。「21世紀という時代を、会場を訪れた人とともに考え、最後は希望を共有する ……そんな展覧会を...
- 2009年01月09日

ダリ、ピカソ 2人の天才画家が出会う場所

裏磐梯に囲まれた場所で見る傑作 福島県の磐梯朝日国立公園に開館した諸橋近代美術館。裏磐 梯を臨む美しい自然の中に佇むこの美術館は、ヨーロッパを 思わせる瀟洒な建物と、スペインの生んだ天才芸術家・サルバ ドール・ダリの豊富な作品で人気を集めてきた。今年、開館10 周年を迎え、記念特別展として現在開催されているのが、『ス ペイン2大巨匠 ダリとピカソ展』。言うまでもなくダリもピカ ソも、20世...
- 2009年01月09日

コンラッド・リーチ作品展がMINORITYREVに上陸

リーチが描く、カルチャー・アイコンの姿 ジミ・ヘンドリックスや女優のマレーネ・ディートリッヒなど、60年〜70年代に活躍したカルチャー・アイコ ンのクローズアップを鮮やかな色使いで描きあげ、瞬く間に広告、ファッション、音楽業界など各メディアで 話題となったコンラッド・リーチ。彼の作品は現代的な手法を用いる一方で、ハンドペインティングというト ラディショナルな技法にこだわり、モデルの持つイメ...
- 2009年01月09日

LUX BOOK REVIEW『ヘッセの夜 カミュの朝』

懐かしくてあたたかい 絵で感じる文学 「何を血迷ったか、文学をテーマに絵を描くことにな った」(本文より)。この本は、画家のささめやゆき氏が 、98年から05年まで『すばる』の表紙を飾った絵に、本 人のコラムを添えた文学絵集だ。取り上げた作品は、 『旧約聖書』『赤と黒』『仮面の告白』『黒い雨』『長距離 走者の孤独』など今東西の文学や映画、演劇作品ばか り。ページをめくるごとに、どこか懐かし...
- 2009年01月09日

LUX BOOK REVIEW『世界ノ夜景』

夜にしか見られない色と輝きにため息 暗闇にならないと見えないものがある。この本は夜景 評論家として活躍する丸々もとお氏と、その弟で写真 家の丸田あつし氏が、世界各国の夜景をまとめた写真 集だ。ともかく美しい。「宝石箱」のような表現も足もと に及ばないぐらい、どの夜景も妖しく光り輝いている。 おそらく撮影した時間や空気の透明度、撮影技法によ るのだろうが、赤い夜景、黒い夜景、緑の夜景、黄色の...
- 2009年01月09日

LUX BOOK REVIEW『京極夏彦 画文集 百怪図譜』

骨の随まで京極ワールドに浸る 『姑獲鳥の夏』で衝撃的なデビューを飾った作家・京極 夏彦氏は、優れたアートディレクターでもある。この本 は、2000年に行われた「百怪図譜」という展示会に彼が 出品したリトグラフに彼自身が文章をつけた画集だ。 収められている35点の作品は、すべて妖怪。河童がい て青坊主がいる。「魍魎の匣」の魍魎も、「鉄鼠の檻」の 鉄鼠もいる。そう、まさしくこの本は、骨の随まで...
- 2009年01月09日

LUX BOOK REVIEW『かたとき〜橋本大輔写真集〜』

見落としていた「日常」の安らぎ 世知辛い世の中。慌ただしい毎日。おそらく多くの人々は、ゆっくり立ち止まることを忘れているのではない か。写真家・橋本大輔氏の写真集を開くと、静かに空を見上げる安らぎや花と向き合う喜びがあることを思 い出せてくれる。この写真集は、ひとつとして「珍しいもの」を追いかけてはいない。タイトルが表すように、 日常のかたときに見える風景を、橋本大輔という媒体を通して切り...
- 2009年01月09日

ファブリス・イベールの見たアートと自然

都市の風景を変える、農業+アートの展覧会 パリの凱旋門にある環境保護をテーマとした作品「時の変化」など、環境、農業、アートなどを結び つけて多彩な活動を展開しているフランスのアーティスト、ファブリス・イベール。彼は、数年前、 フランスの田舎、ヴェンデに森をつくり始め、アイデアを育てることと森を育てることに共通点を 見出すようになった。その彼が今、農業とアートを融合した展覧会を青山のワタリウ...
- 2009年01月09日

能の今をパリで伝える、 豊島由佳の世界

現代の映像作品に変換される能の物語 《松風》《隅田川》といった能の代表的な古典劇を独自の美意識で映像世界に甦らせるパリ在住の映像クリエイ ター豊島由佳。"能が能たるための"面、装束、囃子、謡曲、型といった能を彩る全ての要素を削ぎ落としても、能 の世界観を表現することは可能なのだろうか? 彼女が2001年にスタートしたプロジェクト"HELENA"は、この疑 問を出発点に発足、以降新しい物語を...
- 2009年01月09日

アートに愛されたパンクの女王、パティ・スミス

カルティエ現代美術財団で見せた才能 パティ・スミス。その名をロック、あるいはパンクファンなら一度は聴いたことがあるであろう。だが、多くの 人が思い浮かべるパティ・スミスは、70年代にニューヨークで生まれた"パンクの女王"としてものである。 それゆえに彼女のアーティストとしての出発点−最初は詩人として、そして1960年代からはヴィジュアル・ アートの活動−を知る人は少ないかもしれない。6月2...
- 2009年01月09日

ピクトグラム−その世界

世界をリードした日本発の「非常口」 高度経済成長期、日本全体が上を向いて歩いていた時代に、「逃げること」で世界標準を勝ち取った日本人がい た。あの誰もが見たことのある非常口の図記号=ピクトグラムをデザインした多摩美術大学造形表現学部教授 の太田幸夫氏が、その人である。一見シンプルなデザインだが、「誰にでも見えやすく、分かりやすく」という観 点から見て、極めてレベルの高い作品である。ま...
- 2009年01月09日

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