
まったり、つややかなカニ味噌。山田氏は「ほんの少し酒を入れて、軽く炊いただけ」とサラリと言うが、味わいの底深さといったら……! カニの世界観が根底から覆るくらいだ。
カニを超えるカニ
店主の山田達也氏は毎朝、鳥取県との県境にある兵庫県・浜坂漁港に水揚げされる松葉がにを買い付け、その日のうちに使い切る。「日本一の目利きである母が選ぶ」というカニは、「ヤケ」と呼ばれる黄色いシミも、ほんのわずかなキズも一切ない、正真正銘の特級品だ。
「身に旨さをパンパンに蓄えた立派なカニを、心を込めて命がけで料理してお客さんに喜んでいただく。そうしてカニに成仏してもらいたい」
そんな彼の心意気は、カニすき一品から十分過ぎるくらい伝わってくる。料理法としては、まずカニをふんだんに使ってとった出汁を煮立たせた鍋に、白菜、ネギ、椎茸など、鳥取県産の具材を入れる。次に頃合いを見てカニの脚を入れ、静かに泳がせる。色合いを見ながら、「今だ!」の瞬間に引き上げ、殻から半分ほど身をはずして出汁をかける。「スープを一口飲んで、がぶりといって」の言葉を合図に脚肉にかぶりつく。繊細な料理法とは対極にあるダイナミックな食べ方に、旨さがいや増すというものだ。口の中で旨さが炸裂する。また脚も爪も胴も他の具材も一つずつ火入れを変え、余熱を駆使しながらの低温調理で料理し、具材ごとに皿をかえて出していくのが「かに𠮷流」。カニすきの世界が一変する細やかさだ。
「身に旨さをパンパンに蓄えた立派なカニを、心を込めて命がけで料理してお客さんに喜んでいただく。そうしてカニに成仏してもらいたい」
そんな彼の心意気は、カニすき一品から十分過ぎるくらい伝わってくる。料理法としては、まずカニをふんだんに使ってとった出汁を煮立たせた鍋に、白菜、ネギ、椎茸など、鳥取県産の具材を入れる。次に頃合いを見てカニの脚を入れ、静かに泳がせる。色合いを見ながら、「今だ!」の瞬間に引き上げ、殻から半分ほど身をはずして出汁をかける。「スープを一口飲んで、がぶりといって」の言葉を合図に脚肉にかぶりつく。繊細な料理法とは対極にあるダイナミックな食べ方に、旨さがいや増すというものだ。口の中で旨さが炸裂する。また脚も爪も胴も他の具材も一つずつ火入れを変え、余熱を駆使しながらの低温調理で料理し、具材ごとに皿をかえて出していくのが「かに𠮷流」。カニすきの世界が一変する細やかさだ。

鮮やかな朱の殻をまとった、香り高い焼きガニ。「火の通ったレア」の状態になったカニの身のみずみずしく、とろりとした食感が口の中に広がる。