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食語の心 第99 回
作家 柏井壽
おいしさの条件
何度も書いてきたが、長期にわたるコロナ禍は、多くの人々を苦しめたが、その間に学んだことも少なくない。とりわけ「食べる」ということの本質を見つめ直す、いい機会になっただろうことは間違いない。飲酒を伴う外食や、多人数での会食などは、長期間にわたって自粛を強いられ、やむなく内食に専念した向きも多かった。

 コロナ禍以前は、おいしいものを食べたくなれば外食、ふだんの家ご飯は簡素に、というパターンが多く、その形が崩れてしまったことに、当初はたいていが戸惑った。
 時短だとか、手抜きのヒントを教える料理本やレシピは売れても、手間ひまを加えて作る料理のテキストはまったく人気がない。ずっとそんな時代が続いていたから、出来合いの総菜や簡易な料理に頼ることを当然としていた家庭で、いきなりごちそうを求めても無理というものだ。

 そんななかで、長期戦になると読んだ店側は、店内飲食を自粛して、持ち帰りや宅配に注力するようになり、やがてそれが、外食の代わりを果たすようになった。それもしかし、限られた店だけのことで、種が尽き始めると、高級食材を取り寄せ、家庭でごちそうを作るようになったのが、第二段階。

 家庭で作るごちそうについては、以前にも書いたように、プロにしかできないもの、素人でもさほど難しくないものと、ふた通りに分別できるようになった。今回はその後者の続きをしよう。
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