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鳥取の食材を味わい尽くす
鳥取・いなば 有隣荘
鳥取の食材をふんだんに用いた料理を食したい。そんな美食家の思いを十全に満たしてくれる料亭がある。「鳥取・いなば 有隣荘」だ。ここは鳥取市の名誉市民で、県・政財界の巨星と讃たたえられた米原章三(よねはらしょうぞう)翁が1961年より所有し、晩年に愛した憩いの場所である。さらに時をさかのぼると、因幡でも屈指の大庄屋、西尾邸に行き着く。良質な米を産する肥沃な土地ゆえに、千代川の度重なる氾濫に見舞われ、平安時代以降、集落は何度も移動を強いられたという。かつて水田地帯にあった西尾邸も、1918年の大水害で現在の場所に移転。新しい邸は贅をこらし、宮大工を呼び寄せ、調度品を京阪まで求めるなど、5年がかりの大工事だったと伝わる。そうして完成したのが、今の有隣荘につながる建物である。
 時の流れに寄り添い、歳月とともに美しさがいや増す建物に身を置き、緑豊かな庭園を眺めやる。そうして食事前のひとときを静寂の中で過ごすことがまた、料理の味わいをいっそう盛り上げるよう。心憎い演出だ。


京都から庭師を呼び寄せ3年かけて完成させたという庭園は、ちょうど紅葉が見ごろ。ライトアップされた建物と庭園が美しく浮かび上がり、静謐なひとときが流れる。
「徳不孤、必有隣(徳は孤ならず、必ず隣あり)」――有隣荘の名は論語にあるこの言葉に由来する。「徳のある人は決して孤立しない。必ず周りに人が寄ってくる」ことを意味する。
 言うまでもなく、料理は「美味」の一語に尽きる。「鳥取にこんなにおいしい食材が豊富にあるとは予想もしていなかった。料理人にとっても最高の環境です」と樽本清吉料理長。京都・大阪で修業、10 年ほど前に有隣荘の厨房に入り、腕を振るう。鳥取和牛、白ネギ、かぶら、ヒラメ、ノドグロ、ブロッコリー、ラッキョウ、小豆……鳥取生まれの食材たちが、樽本氏とともにとてもいい仕事をしてくれる。鳥取に行ったら、ぜひご賞味あれ。


焼白ねぎ寿司。白ネギに、シャリは星空舞。雲丹、合鴨、牡蠣などの高級な海の幸のうまさを引き立てる。
みすじと肩ロース芯、鳥取和牛の2種類の部位を塩焼きに。寄せ野菜添え。
鳥取県産のノドグロと餅の蒸し物。魚ではこのほか、ヒラメの薄造りや白バイなど、お造りの味わいも格別だ。
雲丹仕立ての小鍋。鱈の白子、車海老、三つ葉、かぶらなどが、上品な味わいの“出汁の海”に浮かぶ。
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