いよいよとなる表彰式では、まず、ベストプラッター賞、ベストテイクアウェイ賞、ベストコミ賞の3つの特別賞が授与された。その後にブロンズ、シルバー、ゴールドのボキューズ像の発表である。結果は3位がノルウェー、2位、デンマーク、1位が国の威信をかけてのフランスであった。実は、フランスは8年ぶりの1位とのこと。国をあげての悲願が叶ったわけだ。なにしろ、フランスの試食審査の前に、マクロン大統領が視察に訪れたほどで、いかに、フランスが力を入れていたかがわかる。シェフたちの抱擁、紙吹雪が舞い、鳴物のなりやまぬなか、閉会式は幕をおろした。

表彰台にて国歌斉唱。
浜田統之審査員に1~3位の勝因を簡単に語ってもらった。「まずは、フランスですが、全体の仕上がりが抜群にきれいでしたね。特にプラッターの作り込み方と、テーマであるブレゼの仕上げは完璧でした。デンマークは優勝経験者でもあり、世界のベストレストラン50でも2位に名を連ねる『ジェラニウム』のラスムスがコーチについていたので、その色が全面に出ていて、さすがのセンスと完成度の高さでした。ノルウェーも、家具やアートにも通ずる北欧独得の美意識を貫いた、デザイン性、色使い、世界観は評価できました。他国に比べて、この3か国ははっきりとレベルが違いました。1位~5位までは、私のつけた順位と同じでした」と言う。やはり求められるのは、世界レベルの美意識と味なのであろう。
フランスチームのテイクアウェイ。

フランスチームのプラッター。
戸枝氏に自身の料理に関しての説明と思い入れを聞いた。「テイクアウェイのテーマはトマトと海老。このどこにもある食材をどのように使うのかは悩みどころでした。前菜ではスパイスをきかせたトマトの一皿、主菜には海老のマリネ、デザートには、パプリカを使いながら、トマトそっくりに仕上げるという遊び心を潜ませました。プラッターに関しては、フランスのミスジ肉を取り寄せて、火入れを何度も研究し、ブレゼであっても、レアに近い食感を意識しました。ガルニには、軽井沢の自然や森を表現して、粉の焼き物で静かな森を汲みたてました」という。他国とは異なる、自然と一体となった禅の世界を表すような盛り付けに、会場からは大きな拍手がわいたていた。
日本チームのテイクアウェイ。

日本チームのプラッター。
「順位は本意ではありませんが、とにかく、今はやりきったという清々しい気持ちでいっぱいです。予選、準決勝、本選とコンクールに出るたびに、はっきりと自分でも力がついていくのがわかりましたし、確実にボキューズ・ドールによって、自分は変われたと思います。これからの料理人人生にも必ず、プラスになるはずです。そして、この経験を、また次の若いシェフに伝えていくことができればと思っています」と晴れやかに語ってくれた。
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