「食堂デイズ」と似たパターンだと感じているのが「料理・ワイン イバラキ」だ。京都御苑近くの丸太町通にオープンしたばかりの店は、京都らしい町家造り。この店の最大の特徴は、ランチタイムは中華そば屋、夜はバルスタイルの洋食屋と、二毛作で営業しているところだ。
大阪を中心に、コロナ禍で密ひそかに人気を呼んでいるのは、間借りカレー店だそうだ。バーやスナックなど、夜しか営業していない店を、昼間だけ借り受けて、カレー屋を開く。隠れ家感もあって、けっこう人気なのだと聞く。 夜までカレーの匂いが残らないか、とか、飲食業を軽視しているのではないか、とか、いろいろ気になることはあるが、コロナが生んだ新たなスタイルの飲食店であることは間違いない。
これと似たように思われるかもしれないが、「料理・ワイン イバラキ」のほうは、昼も夜もおなじ料理人が作るのである。昼は20食限定の中華そばを作り、夜は洋食を中心としたビストロ系の料理を作る。これまでありそうでなかったスタイルの店は、そのロケーションの良さもあいまって、早くも人気を呼んでいる。ランチタイム限定の中華そばも、先の「食堂デイズ」の小鍋料理と同じく、料理の枠にとらわれない、というシェフからのメッセージだろう。
この店のシェフもまた、以前は大きなレストランで腕を振るっていた。紆余曲折あっての、今回の新店オープンだが、ここもやはり、目の届く範囲、手の届く範囲でと、小体な店を作ったことが興味深い。
店のかまえもそうだが、料理の内容も同じで、希少な食材を使うこともなければ、玄人受けするような、とがった料理もない。誰もがすぐになじめる、言ってみれば、ごくごく普通の料理ばかりである。「食堂デイズ」の小鍋料理、「料理・ワイン イバラキ」の中華そばランチがそれを象徴している。
もちろん、ハレの日に足を運ぶようなレストランも必要だが、今の時代、ふだんの外食に求められているのは、この2軒が代表するような、普通の店だろうと思う。
食通と呼ばれている人たちは、いまだに名店詣でに精を出し、こだわりとやらをずらりと並べ、やれ、日本一の味わいだの、ほかの店では絶対味わえない、などの賛辞を並べたてている。
普通の店と、極みの名店と、どちらが生き残るのか。ぼくは前者を応援したい。
大阪を中心に、コロナ禍で密ひそかに人気を呼んでいるのは、間借りカレー店だそうだ。バーやスナックなど、夜しか営業していない店を、昼間だけ借り受けて、カレー屋を開く。隠れ家感もあって、けっこう人気なのだと聞く。 夜までカレーの匂いが残らないか、とか、飲食業を軽視しているのではないか、とか、いろいろ気になることはあるが、コロナが生んだ新たなスタイルの飲食店であることは間違いない。
これと似たように思われるかもしれないが、「料理・ワイン イバラキ」のほうは、昼も夜もおなじ料理人が作るのである。昼は20食限定の中華そばを作り、夜は洋食を中心としたビストロ系の料理を作る。これまでありそうでなかったスタイルの店は、そのロケーションの良さもあいまって、早くも人気を呼んでいる。ランチタイム限定の中華そばも、先の「食堂デイズ」の小鍋料理と同じく、料理の枠にとらわれない、というシェフからのメッセージだろう。
この店のシェフもまた、以前は大きなレストランで腕を振るっていた。紆余曲折あっての、今回の新店オープンだが、ここもやはり、目の届く範囲、手の届く範囲でと、小体な店を作ったことが興味深い。
店のかまえもそうだが、料理の内容も同じで、希少な食材を使うこともなければ、玄人受けするような、とがった料理もない。誰もがすぐになじめる、言ってみれば、ごくごく普通の料理ばかりである。「食堂デイズ」の小鍋料理、「料理・ワイン イバラキ」の中華そばランチがそれを象徴している。
もちろん、ハレの日に足を運ぶようなレストランも必要だが、今の時代、ふだんの外食に求められているのは、この2軒が代表するような、普通の店だろうと思う。
食通と呼ばれている人たちは、いまだに名店詣でに精を出し、こだわりとやらをずらりと並べ、やれ、日本一の味わいだの、ほかの店では絶対味わえない、などの賛辞を並べたてている。
普通の店と、極みの名店と、どちらが生き残るのか。ぼくは前者を応援したい。

かしわい・ひさし
1952年京都市生まれ。京都市北区で歯科医院を開業する傍ら、京都関連の本や旅行エッセイなどを数多く執筆。2008年に柏木圭一郎の名で作家デビュー。京都を舞台にしたミステリー『名探偵・星井裕の事件簿』シリーズ(双葉文庫)はテレビドラマにもなり好評刊行中。『京都紫野 菓匠の殺人』(小学館文庫)、『おひとり京都の愉しみ』(光文社新書)など著書多数。
1952年京都市生まれ。京都市北区で歯科医院を開業する傍ら、京都関連の本や旅行エッセイなどを数多く執筆。2008年に柏木圭一郎の名で作家デビュー。京都を舞台にしたミステリー『名探偵・星井裕の事件簿』シリーズ(双葉文庫)はテレビドラマにもなり好評刊行中。『京都紫野 菓匠の殺人』(小学館文庫)、『おひとり京都の愉しみ』(光文社新書)など著書多数。