家族団欒でもなく、美食を極めるでもなく、ましてやひとりご飯を愉(たの)しむでもなく、グルメ仲間と〈リアルいいね!〉を共有することに価値を見出(みいだ)す。なんとも不思議な時代になったものだ。
アマチュアの料理と言えば、料理家という存在も常々不思議に思っている。まずは料理家を名乗る人の数が尋常ではないほどに多いことが不思議でたまらない。
いったいぜんたい、料理家とは何をする人なのか。
家と付く人々は概(おおむ)ねプロである。作家、作曲家、作詞家、華道家、書家など、少なくともそれによって生計を立てていればこそ、家を名乗るのである。
それらと比べて、料理家を名乗る人たちの多くは名乗っているだけなのではないだろうか。店を持つでもなく、料理本を出版するでもなく、真っ当な料理教室を開くでもなく、ただ自ら名乗っているだけの料理家。
再び先述の社会現象に詳しいエキスパートに問うてみた。
「特に女性に顕著なのですが、今の時代はみんな、肩書が欲しいんですよ。主婦という立場に留(とど)まることなく、広く世間一般に通じる肩書を求めてのことです。資格ブームともどこかで繋(つな)がっていますね」
実に分かりやすい解説をしてくれた。つまりはこれも〈リアルいいね!〉のひとつなのだろう。
かくして、アマチュアの自称料理人が世間に溢(あふ)れることになるのである。
その萌芽はプロの料理人にあったと言えば言葉が過ぎるかもしれないが、全否定することもできないだろうと思う。
この連載でも繰り返し書いてきたことだが、昔の料理屋に比べて、今の時代は若くして開業するケースが格段に増えてきた。
多くは30代前半、人によっては20代半ばで開業してしまう。いくらスピード優先の時代とは言え、あまりにも修業期間が短いのではないかと思う。
わけても日本料理の世界では、学ぶべきことは山ほどある。ただ料理を作るだけでなく、行儀作法、器の知識と扱い、茶道、華道、建築、美術、芸能全般など、幅広い知見を備えなければ、真っ当な日本料理を作ることなど出来はしない。それには10年やそこいらの修業期間は短すぎるのである。
どんなに流行(はや)っていても、予約が取れない人気店でも、それをプロと認めることは難しいのだ。
アマチュアの料理と言えば、料理家という存在も常々不思議に思っている。まずは料理家を名乗る人の数が尋常ではないほどに多いことが不思議でたまらない。
いったいぜんたい、料理家とは何をする人なのか。
家と付く人々は概(おおむ)ねプロである。作家、作曲家、作詞家、華道家、書家など、少なくともそれによって生計を立てていればこそ、家を名乗るのである。
それらと比べて、料理家を名乗る人たちの多くは名乗っているだけなのではないだろうか。店を持つでもなく、料理本を出版するでもなく、真っ当な料理教室を開くでもなく、ただ自ら名乗っているだけの料理家。
再び先述の社会現象に詳しいエキスパートに問うてみた。
「特に女性に顕著なのですが、今の時代はみんな、肩書が欲しいんですよ。主婦という立場に留(とど)まることなく、広く世間一般に通じる肩書を求めてのことです。資格ブームともどこかで繋(つな)がっていますね」
実に分かりやすい解説をしてくれた。つまりはこれも〈リアルいいね!〉のひとつなのだろう。
かくして、アマチュアの自称料理人が世間に溢(あふ)れることになるのである。
その萌芽はプロの料理人にあったと言えば言葉が過ぎるかもしれないが、全否定することもできないだろうと思う。
この連載でも繰り返し書いてきたことだが、昔の料理屋に比べて、今の時代は若くして開業するケースが格段に増えてきた。
多くは30代前半、人によっては20代半ばで開業してしまう。いくらスピード優先の時代とは言え、あまりにも修業期間が短いのではないかと思う。
わけても日本料理の世界では、学ぶべきことは山ほどある。ただ料理を作るだけでなく、行儀作法、器の知識と扱い、茶道、華道、建築、美術、芸能全般など、幅広い知見を備えなければ、真っ当な日本料理を作ることなど出来はしない。それには10年やそこいらの修業期間は短すぎるのである。
どんなに流行(はや)っていても、予約が取れない人気店でも、それをプロと認めることは難しいのだ。

かしわい・ひさし
1952年京都市生まれ。京都市北区で歯科医院を開業する傍ら、京都関連の本や旅行エッセイなどを数多く執筆。2008年に柏木圭一郎の名で作家デビュー。京都を舞台にしたミステリー『名探偵・星井裕の事件簿』シリーズ(双葉文庫)はテレビドラマにもなり好評刊行中。『京都紫野 菓匠の殺人』(小学館文庫)、『おひとり京都の愉しみ』(光文社新書)など著書多数。
1952年京都市生まれ。京都市北区で歯科医院を開業する傍ら、京都関連の本や旅行エッセイなどを数多く執筆。2008年に柏木圭一郎の名で作家デビュー。京都を舞台にしたミステリー『名探偵・星井裕の事件簿』シリーズ(双葉文庫)はテレビドラマにもなり好評刊行中。『京都紫野 菓匠の殺人』(小学館文庫)、『おひとり京都の愉しみ』(光文社新書)など著書多数。