
約20年間にわたって日本ワインを注視し続けてきた若林英司さん。海外のソムリエに日本ワインを紹介する機会も増えたという。シックな雰囲気が色濃い「アジル」の店内にて。

若林英司の日本ワインセレクション
Photo Masahiro Goda Text Izumi Shibata
幅広い知識と鍛え抜かれたセンスで、時にストレート、そして時にマニアックなセレクトを見せてくれる「エスキス」「アジル」のチーフソムリエ、若林英司さん。今まさに百花繚乱(りょうらん)の様を呈している日本ワインの数々の中から若林さんが見定めた、勢いと実力を兼ね備える8本を紹介する。
近年、ますますの充実を見せている日本ワイン。今回若林英司さんが選んだのは、日本ワインの躍進を支えてきた造り手、流れに新しく加わった若い造り手、それぞれからバランスよくセレクトした8本だ。
「日本ワインの造り手を大まかに分けると、大手企業、地域に根ざした歴史あるワイナリー、個人規模の小さなワイナリー、の三つの存在感が大きいと思います」と、若林さん。
大手では、キリンによるメルシャン、キッコーマンによるマンズワイン、そしてサントリーなどが有名。一方、地域の歴史あるワイナリーは中規模なところが多く、今回挙げた中では山形のタケダワイナリー(30ページ)、山梨の中央葡萄酒(34ページ)が該当する。個人規模のワイナリーは、信念を持って葡萄の栽培から取り組む“ドメーヌ"のスタイルが多い。
「この20年ほどで、三者が三様のスタンスでワインの品質を向上させてきました。理想を追求する個人。ハイエンドをブラッシュアップしつつ、多くの人が飲める手ごろ価格でもおいしさを実現した大手。その両方をバランスよく取り入れて、ステップアップした中堅。さまざまな造り手が、おのおのの立ち位置からワイン造りに真摯(しんし)に向き合ってきた成果が出て、それぞれに将来もあるのです。“造り手の多様性が前提"という、海外のワイン先進国と同じ状況が整った。日本ワインは今、そんな充実の時を迎えています」
こうした全体的なレベルアップの背景にあるのが、葡萄の品質向上だ。この20年ほどで大手や中堅は意欲的に自社畑を増やし、葡萄の栽培にも力を入れてきた。葡萄を農家から買い付ける場合も、コミュニケーションを密にして、望む品質の葡萄を栽培してもらっている。個人の造り手も、個人ならではの自由さでよりよい栽培を模索している。
「醸造の技術も上がっていますが、何よりも葡萄のポテンシャルが上がりました。“ワインは農作物"とはよく言ったもの。かつては『ヨーロッパに負けない力強いワインを造らねば』という思いのためか、補糖、補酸、濃縮といった手を加えた醸造も多かったのです。それが、『もっと自然に素材の特徴を出そう』という方向に変わった。それを、葡萄の品質の向上が下支えしたのです。葡萄がよいから、余計な手間をかけなくてもおいしいワインができるようになりましたね。世のナチュラル志向も、この流れを後押ししています。こうしてワインが葡萄を素直に表現するようになったため、ワインから風土を感じ取ることができるようになった。とても健全な状態です」
料理との合わせを考えても、現在の日本ワインの流れは好ましい方向にある、と話す。
「日本ワインの造り手を大まかに分けると、大手企業、地域に根ざした歴史あるワイナリー、個人規模の小さなワイナリー、の三つの存在感が大きいと思います」と、若林さん。
大手では、キリンによるメルシャン、キッコーマンによるマンズワイン、そしてサントリーなどが有名。一方、地域の歴史あるワイナリーは中規模なところが多く、今回挙げた中では山形のタケダワイナリー(30ページ)、山梨の中央葡萄酒(34ページ)が該当する。個人規模のワイナリーは、信念を持って葡萄の栽培から取り組む“ドメーヌ"のスタイルが多い。
「この20年ほどで、三者が三様のスタンスでワインの品質を向上させてきました。理想を追求する個人。ハイエンドをブラッシュアップしつつ、多くの人が飲める手ごろ価格でもおいしさを実現した大手。その両方をバランスよく取り入れて、ステップアップした中堅。さまざまな造り手が、おのおのの立ち位置からワイン造りに真摯(しんし)に向き合ってきた成果が出て、それぞれに将来もあるのです。“造り手の多様性が前提"という、海外のワイン先進国と同じ状況が整った。日本ワインは今、そんな充実の時を迎えています」
こうした全体的なレベルアップの背景にあるのが、葡萄の品質向上だ。この20年ほどで大手や中堅は意欲的に自社畑を増やし、葡萄の栽培にも力を入れてきた。葡萄を農家から買い付ける場合も、コミュニケーションを密にして、望む品質の葡萄を栽培してもらっている。個人の造り手も、個人ならではの自由さでよりよい栽培を模索している。
「醸造の技術も上がっていますが、何よりも葡萄のポテンシャルが上がりました。“ワインは農作物"とはよく言ったもの。かつては『ヨーロッパに負けない力強いワインを造らねば』という思いのためか、補糖、補酸、濃縮といった手を加えた醸造も多かったのです。それが、『もっと自然に素材の特徴を出そう』という方向に変わった。それを、葡萄の品質の向上が下支えしたのです。葡萄がよいから、余計な手間をかけなくてもおいしいワインができるようになりましたね。世のナチュラル志向も、この流れを後押ししています。こうしてワインが葡萄を素直に表現するようになったため、ワインから風土を感じ取ることができるようになった。とても健全な状態です」
料理との合わせを考えても、現在の日本ワインの流れは好ましい方向にある、と話す。