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さざえの空揚げ醤油と青海苔の風味
人は本来生きるために食べてきたから、手づかみやら、かぶりつきとかの原始的モーションにドーパミンが誘発されるのかもしれないが、おいしいの本質は、いつもこのあたりに潜んでいるし、科学的な解釈も成り立つ。
 つまり、さざえのつぼ焼きなら殻の内側に灼や かれて焦げついた部分こそが旨みなのだから、コレをまな板に置けば、まな板に付いてしまうし、そばも勢いよくすすることによって、出汁がそばに絡みつつ口に入ってくるのだ。
 手巻きすしに至っては、手渡しされるがままにすぐ食べるから、海の苔りが湿気ないという利点もあるだろう。
 そんなことばかり考えている私は生きるために食べるというよりも、食べるために生きているような人間だが……。
 時代は価値観を少しずつ変えながら進む。
レストランに求めるものがおいしいから面白いや楽しいに、くつろぎからエンターテインメイトにシフトしつつあるのを横目に見ながらも、台所の流し台に向かってタネを吹きながら食べた西瓜の味を超える西瓜のデザートが作れないと嘆く。昭和の日本には洗練ではない味わいがあったと思うのは、ただのノスタルジーではないだろう。気取りや見た目の美しさのために、おいしさの本質を見失ってはいまいか?
 
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