
進々堂 京大北門前
京都市左京区北白川追分町88
営業時間8:00 ~ 18:00 火曜休み
TEL075-701-4121
京都市左京区北白川追分町88
営業時間8:00 ~ 18:00 火曜休み
TEL075-701-4121
進々堂 京大北門前
京都大学北門前にある進々堂は、1930(昭和5)年にパン屋として創業し、その翌年に喫茶室を併設した。創業者の続木 斉(つづき ひとし)は、1924年に日本人で初めてパン作りを学ぶために渡仏した人物。そして、パリの学生街で学生たちがパンを食べ、コーヒーを飲みながら討論したり、勉強したりして、カフェをまるで教室や図書室のように使う姿を目にする。帰国後、こうしたパリのカフェを手本に、京大生や若者らの「第二の教室・図書室」となるような喫茶店を開いたのだ。現在、京大北門前の店主、川口聡さんは創業者のひ孫にあたる4代目。
「初代は勉強や学問が好きな人だったので、学生や日本の将来を背負って立つ若者を応援したいという気持ちが常にあって、この店を作ったんです。創業当時は珍しかったコーヒーとか、本格的なフランスパン(プチロール)といった西洋のものを学生さんに、気軽に味わってもらって、世界に羽ばたいてほしいという思いが強かったんでしょうね」
京大の教授だった河上肇も、出所後、進々堂のプチロールを思う存分食べるのを楽しみにしていたという。店内を見渡すと、ここが教室や図書室の雰囲気を醸し出しているのは、長年使い込まれた長テーブルと椅子が置かれているからだ。大きなテーブルはどこに座っても相席になる。時には隣の人に話しかけて一緒に勉強をしたり、時には教授が生徒を連れてきて、講義をすることを想定して、選んだという。この机と椅子を製作したのは、河井寛次郎や柳宗悦(むねよし)らの民藝運動に参加した黒田辰秋(たつあき)。のちに人間国宝になった木工・漆芸作家だ。
近年、東京などの喫茶店やカフェでは居座って勉強することを禁止したり、滞在時間を制限したりするところもある。しかし、進々堂にはそうした“決まり"はない。そしてほかの喫茶店と大きく違うのが“音"。「創業者の思いが『第二の教室・図書室』ですので、BGMも流していません。こうした学生さんが過ごしやすいといった“環境づくり"はいつも気にかけています。一度、祖父の時代にBGMを流したことがあったのですが、すぐにお客さんが来なくなってやめたと聞きます。常連さんは、来る時間帯、注文するメニュー、座る場所が決まっている人も多い。たまたまその場所が空いていなかったら仕方なく違う場所に座るんですが、空いた途端にサッと自分でそこに移る。こうした姿を見ると、ウチに来ることが常連さんの生活の一部なんだとうれしくなりますね」
進々堂のコーヒーには、最初からクリームが入っている。創業当時に提供していたコーヒーは、酸味が強かったためミルクを足すと、日本人にも飲みやすい味になるようだ。
進々堂に残る昭和の薫りは、今でも喫茶店が憩いの場であり、思い思いの時間を過ごせる、空間にこそあるのではないか。時代時代の学生たちを受け入れ、送り出してきた、そうした時間の積み重ねでしか作り出せない、心地よさがここにはある。
「初代は勉強や学問が好きな人だったので、学生や日本の将来を背負って立つ若者を応援したいという気持ちが常にあって、この店を作ったんです。創業当時は珍しかったコーヒーとか、本格的なフランスパン(プチロール)といった西洋のものを学生さんに、気軽に味わってもらって、世界に羽ばたいてほしいという思いが強かったんでしょうね」
京大の教授だった河上肇も、出所後、進々堂のプチロールを思う存分食べるのを楽しみにしていたという。店内を見渡すと、ここが教室や図書室の雰囲気を醸し出しているのは、長年使い込まれた長テーブルと椅子が置かれているからだ。大きなテーブルはどこに座っても相席になる。時には隣の人に話しかけて一緒に勉強をしたり、時には教授が生徒を連れてきて、講義をすることを想定して、選んだという。この机と椅子を製作したのは、河井寛次郎や柳宗悦(むねよし)らの民藝運動に参加した黒田辰秋(たつあき)。のちに人間国宝になった木工・漆芸作家だ。
近年、東京などの喫茶店やカフェでは居座って勉強することを禁止したり、滞在時間を制限したりするところもある。しかし、進々堂にはそうした“決まり"はない。そしてほかの喫茶店と大きく違うのが“音"。「創業者の思いが『第二の教室・図書室』ですので、BGMも流していません。こうした学生さんが過ごしやすいといった“環境づくり"はいつも気にかけています。一度、祖父の時代にBGMを流したことがあったのですが、すぐにお客さんが来なくなってやめたと聞きます。常連さんは、来る時間帯、注文するメニュー、座る場所が決まっている人も多い。たまたまその場所が空いていなかったら仕方なく違う場所に座るんですが、空いた途端にサッと自分でそこに移る。こうした姿を見ると、ウチに来ることが常連さんの生活の一部なんだとうれしくなりますね」
進々堂のコーヒーには、最初からクリームが入っている。創業当時に提供していたコーヒーは、酸味が強かったためミルクを足すと、日本人にも飲みやすい味になるようだ。
進々堂に残る昭和の薫りは、今でも喫茶店が憩いの場であり、思い思いの時間を過ごせる、空間にこそあるのではないか。時代時代の学生たちを受け入れ、送り出してきた、そうした時間の積み重ねでしか作り出せない、心地よさがここにはある。