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 その後はサラダ。シーザーサラダや、シェフの気まぐれサラダなど、シンプルなサラダでワインを飲むと、胃が軽くなってくるような気がするから不思議だ。もちろん今も、身体に良いというイメージを持ってはいるが、それ以上に、美味しいもの、としての認識が高まってきての、野菜料理全盛時代だと思う。つまり美味しい野菜が増え、それをアレンジする料理のバリエーションも豊かになってきたのである。
 食べて美味しく、それでいて健康を保つのに役立つなら、これほど有難いことはない。
 というわけで、最近はもっぱら野菜料理を選んで食べているが、その中で、ぜひともお奨すすめしたい料理を幾つかご紹介しよう。
 ひとつはポテトサラダ。
 何処にでもある料理だが、独創的なアイデアで、初めて食べたときに誰もが驚くそれは、京都の割烹店「和食晴ル」で出される。
 通常ポテトサラダというものは、茹でたじゃがいもを潰して、様々に味を付けるのだが、この店のそれは、潰すことなく、じゃがいもの原形を留めた形で味が付いている。小さなものなら丸のまま、少し大きめのものは半分に切った形で、ごろんと皿に載った様子は、何とも愛らしく、そして食べてももちろん美味しい。
 野菜というものは、あまりにその形を崩してしまうと、いったい何を食べているのかが分からなくなる。こうして原形を留めた料理は、安心して食べられる。
 もうひとつはパクチーサラダ。
 エスニック料理などで使われることが多いパクチーは、シャンツァイ、コリアンダーとも呼ばれ、漢字で書くと香菜となるように、独特の香りがあって、好みは分かれる。苦手な人は、食べるどころか、その香りを嗅ぐだけで、顔をしかめるのだが、これを好物とする僕などは、パクチーだけを丼鉢いっぱいにして食べたいと思うほどなのだ。
 京都一の繁華街と言っていい、高倉通四条上るという場所に「IttetsuGrazie(いってつグラーチェ)」という焼き肉屋があり、僕の行きつけの店なのだが、ここに僕の願いを叶(かな)えてくれるパクチーサラダがある。
 丼鉢ではないが、大きめの白いボウルにパクチーがどっさり入っている。これをムシャムシャ食べながら焼き肉を食べると身体中に元気がみなぎってくる。やっぱり野菜は旨い。
かしわい・ひさし 1952年京都市生まれ。京都市北区で歯科医院を開業する傍ら、京都関連の本や旅行エッセイなどを数多く執筆。2008年に柏木圭一郎の名で作家デビュー。京都を舞台にしたミステリー『名探偵・星井裕の事件簿』シリーズ(双葉文庫)はテレビドラマにもなり好評刊行中。『京都紫野 菓匠の殺人』(小学館文庫)、『おひとり京都の愉しみ』(光文社新書)など著書多数。
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