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マナガツオの炭火焼き 空豆、たらの芽添え
神田裕行 真味只是淡
第二十回
Photo Masahiro Goda
三寒四温の木々の隙間から差し込む春の日差しの中で、土筆(つくし)や蕗(ふき)の薹(とう)が風に揺れている。
 猪は筍(たけのこ)を探して里山を闊歩(かっぽ)し、海の中では若布(わかめ)が伸びてサザエやアワビを育て、鯛が産卵期を迎えて赤く美しい姿を肥やし始める。
 春の訪れを告げる食材はみな、太陽の恵みを受けて冬の寒さから解き放たれるのだ。
 春の野菜は苦みを味わう。それは植物の生命の味わいであり、力だ。しかしながら、この味わいを愛(め)でる人種は、日本人を含めてそう多くはないことに最近気づいた。
 例えば台湾の人たちは、日本人に最も近い味覚を持っていると先だって書いたが、そんな彼らにしても苦みは好ましい味わいではないようだ。
 例えば、蕗の薹の苦みなどは、「どうしてこんなに苦いものを出すのか?」と不思議がられてしまうのだが、ヨーロッパの国々、特にイタリア、フランスの方々には、たいそう喜んでいただける。
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