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(上)その年の豊猟を祈願する、サチミタマと呼ばれる猪の頭部。銀鏡神楽では、狩猟文化がメーンテーマの一つとなっている。
(左)神主や宮司など、神職者のみが担える神楽もある。それぞれに神話や人々の生活についてのストーリーがあり、綿密に組み立てられている。
(右)33番の神楽は、優雅な舞から、壇上を大股で飛び跳ね回る力強い舞、厳格なもの、ひょうきんなものなど、バラエティー豊か。
当日は、近隣の手力男(たぢからお)社や六社(ろくしゃ)稲荷社などからご神体が運び込まれて行われる。1番の「星の舞」から、「神送り」まで33番。前半では、降居(おりい)と呼ばれ、神々が次々に降臨する場面を神主や宮司が厳粛に舞う。銀鏡神楽では、いったん神々が降臨すれば、神楽面を神そのものと考えるという。息づかいまで聞こえてくるような表情豊かで迫力のある面と、荒ぶる神々を思わせる力強い舞に、番付が進むにつれ、夜がふけるに連れて、ぐいぐいと引き込まれる。
 神楽の起源は、天岩戸(あまのいわと)の日向神話にあるという。あるとき、アマテラスオオミカミが弟のスサノオノミコトの乱行を悲しみ、天岩戸に隠れてしまったため、神々が相談してさまざまな儀式を行った。最後は芸能の神とされるアメノウズメが、胸をはだけ、裳(も)の緒(ひも)を陰部まで押し下げて舞い踊り、八百万(やおよろず)の神々が笑い転げたところ、アマテラスオオミカミも気になって天岩戸から現れて、世界に光が取り戻された。銀鏡神楽の中にも登場するこの話が、人々の日待ち信仰と重なり、神々に豊作や豊猟を祈願し感謝するものとして、神楽を発展させたとされる。
 本殿祭の終了後、屋外で行われる32番の「ししとぎり」も特徴的だ。ししとぎりとは、猪の通った後を訪ねるという意味の言葉で、話の内容も、男女の神が猪の足跡を追って射止め、持ち帰ったというもの。当時の狩猟生活の様子が、狂言風に生き生きと描き出されている。祭殿に、1週間以内に獲れた猪の頭が供えられるのも、銀鏡神楽の伝統の習わしだ。そして最後は、降臨した神々を送る「神送り」の舞で締めくくられる。
 山中で行われるため、夜は寒さが厳しく、地元の人はこたつなどを持ち込んで鑑賞している。捧げられた猪は、みんなで食べるという。銀鏡神楽は今も、誰に見せるためでもない、西都の人々と神々の心をつなぐ舞なのだ
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