
宮崎の和牛の個人ブランドとして全国的に有名な尾崎牛。尾崎宗春さんが育てた尾崎牛の味わいにほれ込む料理人も多い。最近では日本にとどまらず、世界中がこの脂がきれいで柔らかで旨みがある尾崎牛に注目しているという。東京・外苑前のリストランテ ホンダの本多哲也シェフも尾崎牛“愛用者”の一人。店ではもっぱらこの尾崎牛のランプを料理する。

The TOP of Beef
ブランドが鎬を削る
牛肉王国 宮崎
ブランドが鎬を削る
牛肉王国 宮崎
Photo Masahiro Goda(P1)Satoru Seki(P2-9)
Text Rie Nakajima
Text Rie Nakajima
牛肉に対する考え方が大きく変化している。個人ブランドの台頭、褐色(あかげ)和牛の復権など消費者の意識の変化に合わせ、旨さと安心、安全を追求する生産者が増えてきた。
全国和牛能力共進会(和牛のオリンピック)で2連覇をしている宮崎県には、確固たる信念を持ち個人ブランドとして東京へ、世界へと勝負に出ている生産者も多い。
他にも、パイオニア精神にあふれるフルーツの生産者を訪ねると、銀鏡(しろみ)神楽や西都原(さいとばる)古墳群といったいにしえのよき文化にも出合うことができた。
全国和牛能力共進会(和牛のオリンピック)で2連覇をしている宮崎県には、確固たる信念を持ち個人ブランドとして東京へ、世界へと勝負に出ている生産者も多い。
他にも、パイオニア精神にあふれるフルーツの生産者を訪ねると、銀鏡(しろみ)神楽や西都原(さいとばる)古墳群といったいにしえのよき文化にも出合うことができた。
世界一の牛をつくる――尾崎牛
宮崎市郊外の大瀬町(おおせまち)に位置する、5ヘクタールの尾崎牧場。年間を通して温暖で雨が多く、牧草を育てるには最高の環境だという。水は近くの小川から自家製ポンプで新鮮な湧き水をくみ上げ、牛の飲み水にしている。カルキ臭のある水道水では、牛が十分に水を飲んでくれないそうだ。そのために、おいしい水に恵まれた地を探して、3度の移転を経てたどり着いたのがこの場所だ。飼育されているのは、宮崎育ちの牛の中でも、高い評価を得ることで知られる尾崎牛1200頭。尾崎牛とは、尾崎宗春(むねはる)さんが育てた個人によるブランド牛で、JAを通さず、牧場から日本全国、さらに世界中に生産者直販で届けている。「脂の味が肉の味」と尾崎さんが語る尾崎牛の特徴は、肉の旨みは濃厚だが脂がくどくなく、あっさりしていること。しゃぶしゃぶをしてもアクが出ない、明らかに他とは一線を画す極上の牛肉だ。
宮崎で牛を育てる畜産農家に生まれた尾崎さんは、高校を卒業後、大阪に出たが、離れてみて初めて、宮崎で牛を育てたいという気持ちが固まったという。その理由は、「一番になりたかったから」。他でもない、何よりのごちそうである牛肉を宮崎で育て、そこで一番になることができれば、世界の一番になることも夢ではないと考えたのだ。
尾崎さんはそこで、大学に行く代わりに、自ら4年間のカリキュラムを考案した。まず、最初の1年間で地元の畜産試験場の研修生として畜産の基礎を学習し、次の1年は実家の牧場にて、畜産の現場を実地で学んだ。そして、残りの2年間は国の派遣プログラムに参加し、アメリカへ。1万7000頭の牛を飼育する牧場で、アメリカの飼育方法を徹底的に学んだ。この経験が、尾崎さんの目を開かせたといってもいい。