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食語の心 第29回
作家 柏井壽
最近のお店はホームページよりもSNSをうまく活用している。
 リアルタイムで情報を発信できることもあり、たしかにそのほうが効率的だろうと思う。
 しかしながら、これを見ている側からすれば、良くも悪くも、店のありかたが手に取るように分かるから、店はそのことを十分理解しなければならない。
 最も大切なことは、誰に向けて、何を何のために発信するのか、だ。
 たとえば最近よく見かける、貸切のお知らせ。
 本来の趣旨から言えば、◎月◎日は貸切営業のため、受け入れられないことを詫(わ)びるべきなのだが、これを自慢げに告げる、店のフェイスブックがあったりして、鼻白んでしまう。
 以前はそんなになかったと思うのだが、最近の京都の店も貸切営業をするところが急激に増えてきた。
 たとえばカウンターのみ、10席足らずの割烹(かっぽう)店。
 京都でも有数の人気を誇る店で、予約も困難で、口コミサイトでも、常にトップクラスにランキングされ、多くが絶賛している。
 何年前だっただろうか。開店してしばらく経ったころ、雑誌の取材を依頼すると、即座に断られた。
 雑誌で店の様子や、料理の内容を報(し)らせてしまうと、実際に訪れる客の愉しみが半減するから、というのが店主の意向だった。
 なるほど。たしかにそのとおりだと納得した。
 そのころは、客が店の中の写真を撮ることすら禁じられていたようで、店の有り様として、正しい姿勢だと、陰ながら拍手を送っていた。
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