

「酸を合わせると料理全体が締まります」
レストラン リューズ 飯塚隆太(いいづか・りゅうた)
1968年新潟県生まれ。ホテルやレストランなどを経て「タイユバン・ロブション」の部門シェフに。その後渡仏し、「トロワグロ」などの星付きレストランで修業。帰国後にジョエル・ロブション氏の系列店で腕を磨き、2005年から「ラトリエ ドゥジョエル・ロブション」のシェフを務める。2011年にレストラン リューズをオープン。現在、『ミシュランガイド東京』で二つ星を獲得。
レストラン リューズ 飯塚隆太(いいづか・りゅうた)
1968年新潟県生まれ。ホテルやレストランなどを経て「タイユバン・ロブション」の部門シェフに。その後渡仏し、「トロワグロ」などの星付きレストランで修業。帰国後にジョエル・ロブション氏の系列店で腕を磨き、2005年から「ラトリエ ドゥジョエル・ロブション」のシェフを務める。2011年にレストラン リューズをオープン。現在、『ミシュランガイド東京』で二つ星を獲得。

酢の料理
Photo Masahiro Goda
Text Junko Chiba
Text Junko Chiba
フルコースに酢?
飯塚 僕がいたトロワグロでは、コースのすべての料理に酸味が入っていました。メーン料理に、フランボワーズビネガーを使ったり、付け合わせに、チェリーの酸っぱいのとか……
若林 ああ、オックステールのシチューにチェリーも旨(うま)いよね。肉料理にフルーツと果実酢は合う。
飯塚 そう。僕も牛肉の赤ワイン煮なんかにビネガーを入れますが、酸味があることによって、重いゼラチン質もさっぱり食べられます。肉が柔らかくなる効果もあります。
―コクが出るんですか?
飯塚 はい。ソースのベースを作る時に、例えば砂糖を焦がして酢を入れて煮詰め、また酢を入れて煮詰め……というふうに何回かに分けてやると、酸っぱいだけではなくて甘みが出て、味により厚みが出ます。
本多 イタリアンも煮込み料理に使うパターンが多いですね。今回作ったカチャトーラという郷土料理は、若鶏を酢と白ワイン、アンチョビ、香味野菜、ポルチーニ茸(たけ)などで煮込んだものです。それだけだと酢がガンガン立っちゃうので、鶏から取った汁で割りました。酢はそれなりの量を入れたので、酸味は残ります。
―日本の酢を使ったんですね。
本多 ミツカンの山吹という昔ながらの製法で造っている赤酢です。
若林 ああ、熟成した酒かすで作った酢ね。香りに酒かすのニュアンスがあって、深さとまろやかさが感じられる。僕は煮干しとか、ちょっと乾いた青魚と合わせたら面白いんじゃないかと思いました。
本多 山吹は米酢っぽくなくて、いい意味でバルサミコを詰めた感じ。でも、寿司屋で今人気の琥珀(こはく)という赤酢は、醤油っぽいので、洋食にはちょっと使えないなと思いました。江戸前寿司のものですね。
飯塚 (試飲して)赤酢って、樽たるで寝かせて長期熟成させるシェリービネガーに似てる気がします。
(写真左)野菜のミルフィーユにすだち酢で締めた関あじの薄切りを載せた一品。ソースはトマト酢を入れたトマトのジュレ。「すだちやシャルドネビネガーもいいが、トマトとトマトで相性が良く、おいしく仕上がった」と飯塚。