世界の贅沢、NILEの贅沢

ポテトサラダは、ジャガイモの味を感じるシンプルな味付けに。粗めに砕いたジャガイモを盛り付け、そこにごまのゼリー、ルッコラを載せる。ごまもぱらっと。

ジャガイモと日本

ジャガイモが南蛮船に乗って日本の長崎にやって来たのは約400年前。食用に栽培されるようになるまでに、さらに200年ほどの歳月を要したという。普及が急速に進んだのは、北海道に導入された明治以降のことである。ジャガイモたちは日本の近代化とどう関わってきたのか。現代から未来へと続く道で、どんなふうに私たちに伴走してくれるのか。ジャガイモが小さな体に秘めた骨太で不思議な魅力にアプローチする。

　ジャガイモと聞くと、数十個のコロッケが山と積まれた映像がまぶたに浮かぶ。あれは1970年代、高校生の頃。放課後遅くまで文化祭の準備に追われていた時に届いたその差し入れは、食べ盛りの若者にとっては大ごちそう。目にした瞬間、疲れた体にエネルギーがみなぎり、どんよりした心に幸福感が広がるようだった。
　作家の池波正太郎が随筆の中で「ビールの肴さかなには、ポテトフライが、もっとも好ましい」とし「この食物ほど郷愁のごときものをさそうものはない」とつづっているように、ジャガイモにはどこか、若き日の自分に帰る懐かしい味わいがあるように思う。その背景には「ジャガイモが家庭料理として発展してきた」流れがある。