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鮪の炭炙りとグリーンアスパラガス 吉野葛の黄身あん掛け
外国人客に日本の食べ物で何が好きかと聞いたら筆頭は鮪、しかもトロである。
 鮪の味わいは、赤身の中にあるイノシン酸の旨味と白く点在する脂の絡み合いによって微妙に変化するが、トロはさしずめ霜降りのステーキのような味わいゆえ、外国人客に人気が高い。私自身は関西系の人間だからか、鮪よりも白身派、つまりこれも鮪は旨いが、白身は美味しいという私なりの偏見なのかもしれないが……。やはり私にとって美味しいとは、料理が舌にのった瞬間にひらめく旨さではなく、食べ進むほどにじわじわと心に広がる美味なる幸せのことなのだ。
 私が小さい頃、父は毎晩ヨコの刺身を食べていた。ヨコとは、鮪の幼魚ヨコワの通称だが、すだちをかけたヨコの刺身を父とそして母も飽きずに毎晩食べていたように思う。
 小さな私にとっての鮪はずっとヨコだったせいか、鮪は毎日食べられないと思うがヨコなら毎日でもイケるんじゃないかとふと思う。これはノスタルジアの成せる業なのかとも考えられるが、旨いものは飽きやすいという一つの教訓かもしれない。美味しい炊き込みご飯は大好きだが、白いご飯なら毎日、いや一生食べ続けられるのと似てはいまいか。
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