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 さて、今回のような上品な前菜、副菜の最後には、こってりとした鰻うなぎのご飯はいかがだろうか。
 土用の丑うしの日を待つまでもなく、鰻は僕の大好物だが、近年は天然のものが少なく養殖が優位。ニホンウナギが絶滅危惧種に指定された今、天然魚礼賛は日本料理の一大定義ではあるものの、自然破壊をしてまでの美味求真は時代にも反する。ココは一つ、養殖鰻ととことん向き合ってみた。
 鰻の弱点は天然・養殖問わず、皮の下の泥臭さだから、清い井戸水で数日囲うのが定石。鰻の老舗に「~の井」と井戸の名前がつくのもココからだが、あいにく井戸を持っていないので、今回は鰻重のご飯に仕掛けをしてみた。
 実は今週、台北のホテルでこの料理を出している。ここでも白いご飯ではなく、牛ご 蒡ぼうのささがきと小芋の炊き込みに、かば焼きを載せて鰻重とした。牛蒡の香りは鰻の泥臭さを打ち消し、小芋の粘りはおこわのようなもちもち感をご飯に与えた。
 つまりは鰻の「匂い」を「香り」に、ご飯の一部を同じ糖質の小芋に変換し、より食欲を喚起させつつも、食後に重さを感じさせない鰻重を目指したのだ。
 日本人に近い味覚を持つ台湾人のゲストにも好評をいただいたので、今年はこの料理で7月24日の、丑の日を迎えようと思う。

●元麻布「かんだ」
東京都港区元麻布3-6-34 カーム元麻布1F
TEL03-5786-0150 nihonryori-kanda.com
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