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神田裕行 真味只是淡
第十回
Photo Masahiro Goda 文・神田裕行
「左ヒラメの右カレイ」
 見た目の違いはともかく、カレイとヒラメは味わいが全く異なる魚だ。冬のヒラメは、脂がのってコクのある甘い余韻が持ち味だが、夏のカレイは、むしろコラーゲンに富んだ舌触りとかすかにスモーキーな香りが持ち味だ。
 ヒラメには甘みがあるから醤油やポン酢ですすめ、カレイならさしずめ塩とすだちというのが定番である。だが6月の梅雨の頃なら、さっぱりと梅肉で食べたい。梅肉は好みの梅干しをほぐして叩たたいて作ろう。市販の梅肉よりよほど安くつくし、味わいも段違い。
 紀州産の梅には着色料や保存料を使わない、梅の香り豊かな“本物"が、まだ残っているから見つけて、ほぐし、包丁の背で叩いて、鰹出汁でのばせばできあがり。
 出汁がないならオリーブオイルでのばしてみよう。白身魚の和風カルパッチョなら、冷やした白ワインにもよく合う。トッピングには、この時期に出回る花はな穂ほ紫じ蘇そや茗みょう荷が がいい。上から散らして楽しもう。
 全く我々は、季節によってほしい香りを得られる、得がたい国に住んでいると感じ入る。
 伊豆カサゴの造りは前に紹介したが、この魚の酒蒸しも捨てがたい。頭は軽く塩をして蒸せば、それだけで冷酒の進む格好の酒しゅ肴こうだが、身は酒蒸しにすれば、鮮度が良いほど痩せてしまうから、軽く塩をしてのち葛粉を叩き薄塩の湯で湯引きにする。葛粉のおかげで甘い肉汁を閉じ込め今月の食材マコガレイ 徳島県鳴門産カサゴ 静岡県伊豆産浅蜊 愛知県産鰻 愛知県産たカサゴの身は、旬の愛知の浅あさ蜊り の穏やかな塩味と出合い、初夏にふさわしい味わいの羹あつものとなった。
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