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宮崎牛 厚切りヒレカツ クレソンと海苔のサラダ添え
これは味覚の差異ではなく食材に関する概念の違いだ。蟻や蜂の子、イナゴらのどこまでが食材なのかは、料理を作る人間と食べる人間の個々の自由だが、少なくともガストロノミーの概念は純粋に美味なる食卓であって欲しいし、できればポエティックに美しいほうがいい。私の料理は、写実的でありたいと思う。絵画の歴史になぞらえると写実主義の後には印象、象徴の時代が来てやがてキュビスムへと発展する。
 キュビスムは対象を一度解体し画面上で再構築するという画法で、晩年のピカソやブラックがその代表選手だが、料理の世界でまさにこれを体現したのがスペインのレストラン、エル・ブジのシェフであるフェラン・アドリアだ。彼は食材をナノレベルまで分解し再構築してみせて、当時発展に行き詰まっていたフランス料理界に新しい方向性を与え、センセーショナルに料理界のニューリーダーに君臨した。しかしながら、これはあくまで食材の質が明らかに日本より劣る国々で起きたムーブメントであることを忘れてはいけないし、その旗手であったフェラン自身がその歩みを止めたことにも留意すべきだ。もちろん絵画の世界においても、キュビスムは結局ピカソ以降、その発展を得ていない。
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