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甘鯛 頭《おかしら》焼き蒸し
神田裕行 真味只是淡
第七回

Photo Masahiro Goda 文・神田裕行
おいしい料理にも国境はある。
 先日、東京に来ていた北欧のレストランの料理を頂いた時のこと。
 メンバーは、イスラエル人夫婦、オランダ人夫婦にアメリカ人1人と私の計6人だったが、面白いことに皆それぞれにおいしいと思う料理が違った。
 味覚の差異は生まれ育った環境に最も左右されるし、食材に関する概念も“お国柄"により全く違う。もちろん年齢、体格、性格までが味覚の差異につながると考えれば、最早万人にとって最高の美味などあるはずはないと感ずる。
 甘鯛は頭がおいしい。これは魚の頭部が美味と認識するアジア人ならほぼ喜ぶ料理だが、欧米のマダムならば間違いなく顔をしかめてしまうに違いない。私は若いころ、チュニジアの市場で羊の頭を選んでいる若いスラブの女性を見た。眠るように閉じている羊の瞼(まぶた)を、指で押し上げ鮮度を確認していた。きっと彼女はその後、台所で鼻歌を歌いながら家族のために、羊の脳みそを焼いたのだろう。こう考えれば、私たちが魚の白子や頭をおいしそうに食べている姿は、彼らの目にはどう映るのかおおよその察しは付く。
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