PAGE...1|2|3
鳥取県知事 平井伸治
ひらい・しんじ
1984(昭和59)東京大学法学部卒業。地方自治の現場を志し、自治省に。その後、兵庫県、福井県で勤務。地方行政の実務や政治改革・地方税財政基盤強化等の制度改正に取り組む。1995(平成7)年9月から半年間米国に派遣され、米国連邦選挙委員会、カリフォルニア大学バークレー校政府制度研究所客員研究員。1999(平成11)年に鳥取県総務部長を務め、2001(平成13)年には全国最年少で鳥取県副知事に就任。2005(平成17)年に総務省に戻り、選挙部政党助成室長、2006(平成18)年に自治体国際化協会ニューヨーク事務所長を経た後、2007(平成19)年に鳥取県知事選挙で初当選し、就任。2019年4月から4期目に突入した。
自然と熱意と知恵が
Photo TONY TANIUCHI Text Junko Chiba
日本で一番小さな県の一つ、鳥取県がユニークな施策の下、魅力と存在感を増している。
その活躍ぶりはまさに、すばしこく動き、多種多彩な技を繰り出す小兵力士のよう。
県政をリードして12年、平井伸治知事に「小さくても勝てる」手の内を明かしてもらった。
20年前、自治省官僚として鳥取県庁に赴任した日、空港に降り立った時のことを、平井伸治知事はよく覚えている。日本海に流れ込む黒潮が冷たい海に出合い、空に向かってモクモクと湧き上がる水蒸気と、海にかかる靄(もや)の織り成す幻想的な風景を見て、「ああ、これからここで暮らし始めるんだな」としみじみと思ったという。
 「正直、鳥取と言えば砂丘と二十世紀梨、程度のイメージしかなかったんですが、来てすぐに認識を新たにしました。温泉は豊富だし、食べ物はおいしくてリーズナブル。また夏は、小島浮かぶ浦富(うらどめ)海岸に代表される絶景の中、青く透き通った海を泳ぐ楽しみがあり、冬は大山(だいせん)周辺のスキー場で遊べる。別天地なんです。それなのに遊びに来る人が少ないのか不思議でした。原因はセールス下手で引っ込み思案という県民性にあったんですね」
 平井知事のユニークな発案の一つが「県の改名」だ。「前に赴任した福井では、越前がにが自慢の逸品で、浜ゆでだから新鮮、旨いと人気でした。値段も高くてね。鳥取の松葉がにも同じズワイガニで同じくらいおいしいのに高値がつかない」という。
「売り方が問題だと思った」知事は、2014年から日本一カニの水揚げが多いことから、「蟹取(かにとり)県」へ改名し、「蟹取県ウェルカニキャンペーン」を展開した。と同時にブランド化を進め、2015年には特選とっとり松葉がに「五輝星(いつきぼし)」というトップブランドもつくった。昨年の初競りで1杯200万円もの値がつき、「競りで落札された最も高額なカニ」として、ギネス世界記録に認定された。
PAGE...1|2|3

記事カテゴリー