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河豚白子焼き 粥仕立て
 白子は焼いて香ばしさを出す。焼き餅へのオマージュだ。小さい頃は、毎年暮れのみそかにお向かいの家の土間で餅をついた。腰を入れてと言われても分からず、ただ力まかせに杵を振るい大人たちに笑われたのは、遠い昔の良き思い出だ。力強く餅をついていた父の姿も誇らしかった。
 ついた餅を丸めるのは、女、子どもの仕事だ。粉をまぶし、いつくしむように丁寧に丸める母を見習い、姉や近所の子どもたちと不器用にまねた。三が日を過ぎ、硬くなった餅は、七輪であぶる。砂糖もつけないのに甘い香り。子どもたちは、砂糖醤油をかけておやつに食べた。
 白子はあぶるとやはり甘い香りがする。焦げ目は甘みを引き出すのか。料理のヒントは、日々の生活の中にある。今日の朝ご飯や、昨夜の焼き鳥にも、きっと何かのヒントが落ちている。楽しみながら、丁寧に。かけがえのない一食一食を、大事に積み上げていこう。やっと道は見え始めたばかり。とにかく今は料理することが楽しくて仕方がない。

●元麻布「かんだ」 東京都港区元麻布3-6-34 カーム元麻布1F TEL03-5786-0150

※今月の食材
セイコガニ 島根県産
ズワイガニ 島根県産
伊勢海老 三重県伊勢産
河豚の白子 山口県下関産
蕪 京都府産
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