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鳴門鯛の昆布締め 割醤油添え
鯛に始まり鯛に行き着く。お造りの王道にして最高峰。こんなに見目うるわしく、香り高い、そしておいしい鯛は世界中で 日本にしかない。これこそ日本料理の贅沢だ。
つまり日本の鯛の名産地、例えば明石に流れ込む加古川の源流には栗、松茸、黒豆で名高い丹波があり、富士山系一級河川の流れ込む駿河湾、相模湾などが良い漁場になっていることからも推察できるし、我が故郷、徳島県においても吉野川の流れ込む鳴門海峡近辺で取れた鯛には、室戸岬に向かう南の海岸線で取れたものより、高い値がつけられていることも事実だ。僕は雌の2歳半を好む。体長約50㎝弱、目の下3寸、人間に例えると30歳前後。身には程よい甘みと弾力があり、皮は柔らかく、色目も赤みが強く美しい。ちなみに鯛は、1匹の雄に4、5匹の雌がつき、群れで暮らしていると教えてくれた鳴門の鯛漁師。「ほなけん鯛は王様なんじゃ」と笑う。名人は御歳86歳、60歳で一人前と呼ばれる鳴門の鯛漁師は皆健康で陽気だ。
 料理の話に戻ろう。
 鯛の甘み旨味を生かすため、かんだでは、造り身に淡く塩をして、軽く昆布締めにする。時間にして3分から5分、昆布の旨味を足すためというより、塩をして浮き出た水分を昆布に吸わせて脱水を抑え、鯛の切り口を昆布の粘りで手当てするイメージ。こうすることにより鯛の旨味の輪郭がはっきりとし、より強く甘みを感じることができる。無論、加えた塩の分だけ醤油は淡くし、造りとしての塩分総量を抑えることも忘れてはならない。
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