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てんぷら 深町
店主 深町正男
天ぷらの料理人は、職人とも呼ばれる。名門、山の上ホテルで34年と10ヶ月勤め上げ、53歳にして「職人に定年なし」と独立した「てんぷら 深町」店主、深町正男はしかし、天ぷらは誰でも上手になれると言う。
「みんな上手になる前にやめるだけ。頭で考えるより先に体が動くまで、揚げて揚げて、相当な数をこなしてやっと自分のものになるんです」
 曰く、天ぷらは材料と油が8割、残り2割が技術。技術とは、体に覚えさせた勘と言い換えてもいい。
 種の材料は野菜も魚介も毎朝築地で見立て、それに薄衣を纏わせて太白胡麻油で揚げる。さらりと軽くもたれないが、調理においてはコシが強く、種をしっかり包みこむ油だ。
「一番大事なのは、“よく揚げる"ことです。とくにかき揚げは少々揚がりすぎ気味のほうが、丼つゆをかけた時においしくなる」
 とはいえ大きなかき揚げが圧巻の「野菜のかき揚げ天丼」(ランチ2,500円)は、具だくさんなだけに“よく揚げる"のが難しい。この日はゴーヤやトウモロコシ、ミョウガなどの夏野菜9種(通常の天丼は魚介2種に野菜5種)を、油の中で3段階に分けて重ね、大きくまとめていく。180℃でじっくり揚げたかき揚げは、囓るとカリッと音を立てて崩れ、薄衣の中に閉じこめられていた野菜の香気が一気に立ち上がる。
 この理想の仕上がりが、忙しい時でも、体調が悪い日でも、常に一定であるように。日々淡々と重ねられるその仕事を想像した時、ふと「境地」という言葉が浮かんだ。

●てんぷら 深町
東京都中央区京橋2-5-2
サブジュードグリン京橋 シノハラビル101号
TEL03-5250-8777
営業時間:11:30 ~13:30(LO)、17:00 ~20:30(LO)、
※土日祝 12:00 ~14:00(LO)、17:00 ~20:30(LO) 
定休日:月曜、第1・3 日曜
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