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(左)赤ムツの山椒醤油掛け
深海の魚には、えたいの知れない魔味がある。一切、日の差さぬ暗闇の海で、何年も何を食べていたのだろうか。
(右)梅射込み湯引きハモ
ハモは800グラムあたりの淡路島沼島(ぬしま)のものを最上とする。ちなみに私は骨切りの際、手首を上に振り抜かず、むしろ下に打ちおろす。
神田裕行 真味只是淡
Photo Masahiro Goda 文・神田裕行
元麻布かんだ 第二回
今年の夏は唐突に去っていった。料理を替えるタイミングを、肌で感じる。
 魚はカレンダーを見て暮らしているわけではないから、8月が9月になったところで、急に浜に上がる魚が変わるはずもないが、水温が変化すると市場の魚種は、劇的に入れ替わる。そして、涼しい風が吹き出すと、我ら人間の食べたいものもガラリと変わる。
 祇園祭のせいかどうかは分からないが、ハモは盛夏が旬と思われがちな魚だ。しかし、実は秋風が吹いてからのほうが、脂が乗っておいしいと思う。
 湯引きや牡丹ハモ椀が定番だが、湯引きに関しては2004年の開店以来、店で出したことがなかった。あのパサパサした感じが好きではなかったし、独自の工夫を思いつくことができなかったからだ。
 この夏の終わりに、ようやく完成したのがこの葛引きハモの梅肉射込み。紀州の最上の梅を粗叩きにして、骨切りした身に挟んで葛打ちし、沸かした鰹出汁しを二度潜らせて、熱々を勧める。山葵はほんのり出汁で伸ばして、柔らかさを沿わせるとなお良いだろう。
 晩夏の食卓に温かいハモの甘みを感じていただきたい。
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