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(左)近江牛のヒレカツ(3,300円)。揚げ物のコツは、「細かいパン粉を薄くからめて、185度くらいのサラダ油でちょうど火が通ってミディアムになったところで上げる」こと。千也さんは色や油の音、泡立ちでベストなタイミングを判断。「時間なんか計ったことない」そうで、経験が全てなのだ。
(右)大きな有頭のエビフライとハンバーグ、クリームコロッケがセットになった「スペシャル」(2,700円)は、2代目の時からの人気メニュー。クリームコロッケはホタテとエビがごろごろ入ったカレー風味。デミグラスソースは牛筋、にんじん、玉ねぎ、セロリを煮込んで2週間がかりで作る絶品だ。
千ちゃんの“絶品デミグラス”
 千也さんがふじ家を継いで3代目に就任したのは1993(平成5)年である。それまでは電電会館の結婚式場やホテル阪神で修業し、1971(昭和46)年に実家とは別のふじ家をオープンして独立。その5年後に実家に呼び戻され、父親と二人三脚で17年間勤めた後の“事業承継"だった。
「うちは親父がまっちゃまち筋に店を開いた1935(昭和10)年が創業年。でもそれ以前、大正時代から汁ものなんかを出す食堂をやっていて、親父の代からすき焼きとかとんかつ、カレーなんかをやるようになったんです。もう80年経ちますが、私たちがいつも思ってるのは『厳選したいい素材を使うのは当たり前。それを安く提供して、お客さんに喜んでもらうこと』、それだけです。そのためには料理もサービスも昔のままではいかん。グレードアップせんとね。まぁ、そんなんは普通のことですけどね」
 と言う千也さんとともに店を営む晴子夫人は、店を貫く思想を「真心」の一語で表現する。
「先代のおじいちゃんは食材にこだわってはって、『お肉は、目を見るだけで質が分かる魚と違って、なかなかおいしいもんが見分けられへんから、朝昼晩食べなさい』とよく言われました。おばあちゃんは『一円でももうかったらええねん』という人でね。私たちは二人から『いいものを安く』の真心を教わりました。主人の料理はほんとにおいしい。例えば揚げ物なんか、音が違います。揚げるテンポもいいし、見ていて気持ちいいくらいです。あと、デミグラスソースはおばあちゃんも『千ちゃんのは絶品や』と絶賛してましたね」
 千也さんが「老若男女に喜んでもらえる、ご飯に合う料理」と定義する洋食は、やがて看板娘・栄子さんのご主人で、“イタリアン出身"の林一義さんが継ぐ予定だ。

●洋食屋 ふじ家
大阪市中央区鎗屋町2-2-1 TEL06-6941-7283
営業時間11:30~14:.00(L.O.)18:00~21:00(L.O.)
日曜・祝日定休
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