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「どこまでも日本料理らしくない鱧料理を作り上げるべく、あえて骨切りをしないつもりでしたが、『木乃婦』さんの鱧をいただき、自身の過ちに気づきました」と下村。初めて骨切りに挑んだ。

しもむら・こうじ
1967年茨城県生まれ。86年辻調理師専門学校卒業。「ラ・コート・ドール」などフランスの三つ星レストランを中心に修業を重ね、2007年に「エディション・コウジ シモムラ」をオープン。今年8月にはコペンハーゲンで行われたシンポジウム「サイエンス・オブ・テースト」で世界的に有名な科学者に交じって“おいしさを科学する料理”を発表。さらに秋以降に自身がデザインするテーブルウエアをドイツで発売予定。現在、『ミシュランガイド東京』で二つ星を獲得。
こうしてできたのが右ページの料理。口を大きく開けた頭とマカロニ状の浮き袋が衝撃的な出合いを果たした一品である。千切りにしたコリンキとラディッシュを添え、鱧が餌とする小海老の素揚げと、鱧の鋭い歯を連想させるノコギリソウを散らす。ソースは、鶏、野菜、熟成バルサミコと鱧の卵、そして白ワインを塗って130℃で焼いた骨で仕立てたもの。ゼラチン質のプルプル感や野菜のシャキシャキ感、ソースの香ばしさが素晴らしい。
 もう一皿の鱧の落としは、瀬戸内がテーマ。徳島産の850gの鱧を和に準じて落としにし、塩漬けにした瀬戸内レモンの皮と生胡椒の塩漬け、キュウリを合わせた。梅肉ではないところがしっかりフレンチだ。
「実はもう一つ、そばがきと言うか、ブルターニュ産のそば粉に鱧の頭や骨で取った出汁を混ぜてベニエの生地を作り、そこに皮目を下にして鱧をのせ、下から強火で揚げるように焼く料理を作ってみました。皮は鱧のエキスが凝縮されてカリカリ。身はふっくら。そこにトリュフと肉汁をかけて、重層的な味わいが楽しめます。こちらは京都から帰ってすぐ、そばをジャガイモに替えて店のメニューに載せています」――下村はこれらの料理を、「帰りの新幹線の中で考えた」とか。絶品の鱧を京都で食べ、その時に得たイメージが新幹線の中で形になったわけだ。下村にとって新幹線は、常に「料理カンが一番さえる最高の空間」らしい。

●エディション・コウジ シモムラ
東京都港区六本木3-1-1 六本木ティーキューブ1F
TEL03-5549-4562 www.koji-shimomura.jp
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