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周囲には証券取引場や中央郵便局などが立ち並ぶ。
3年をかけて進化してきた小林氏の料理を味わうと、食材を昇華させるために施された仕事の奥深さに感銘を受ける。皿の上に載った料理はごく自然に見える。しかしその裏に、その食材の一番おいしい部分をストレートに引き出すための膨大な仕事が隠されているのだ。
「例えばニンジン。油脂を含ませながらゆっくり加熱すればもちろんおいしい。でも、今日入荷したニンジンは昨日のよりもちょっと太い。だったら、岩塩包みで柔らかく熱を入れた方が、より風味が出る。でも、岩塩包みだからといって、客席で塩釜を割るパフォーマンスはしない。厨房で釜を割り、皿にはニンジンだけを盛りつける。仕事はゲストに見せなくていい、味に表現されるおいしさで感動してもらえればいい」
 食材も自分も自然体でいながら、目の前の食材を最高においしい形に変えるのだ。小林氏にとって、一本のニンジンは、ニンジンという概念ではなく、一本のニンジンという個体。日々わずかながらも状態が異なる食材とより深く向き合っていきたい、と厨房に立っている。
 目標は? と問うと、「ゲストに世界一おいしいレストランと思ってもらうこと。そして、ムッシュ・デュカスを超える」と即答。パリを本拠地にガストロノミーレストランで自己表現をすると同時に、世界でも勝負をかけたい。世界に身を置き多くの刺激やインスピレーションを受けて自己発展につなげ、さまざまな形で食を発信していきたいと思っている。「今は時期尚早。いずれ、もう少ししたら……」とにやりと笑う小林氏。その目は世界に向けられ、「レストラン・ケイ」はそこに乗り込むべく、熱く燃え始めている。

●Restaurant Kei
5 Rue Coq Héron 75001 Paris, F RANCE
TEL+33 1 42 33 14 74
www.restaurant-kei.fr
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