

食語の心 第15回
作家 柏井壽 Photo Masahiro Goda
地方を旅して、美味しい店をどうやって見つけるか、そんな話の続き。
北陸のとある地方都市。秀逸な串揚げ屋を見つけ、満ち足りて食事を終えようとして、カウンターを挟んで、店の主人と食談義となった。
鮨の旨い店を探していることを伝えると、間髪を入れずに答えが返ってきた。
「ウチの店のすぐ裏に、去年かな、鮨屋ができたんですよ」
「どんな鮨です?」
僕は即食らいついた。
「江戸前の鮨みたいです。評判もいいですよ」
江戸前鮨フリークの僕には、願ってもない話ではないか。
勘定を済ませると、主人が送りに出て来てくれた。
「よければご案内しますよ」
そう言って案内してくれたのは、まさしく串揚げ屋の真裏。
こぢんまりした構えは好感が持てる。加えて、店の中から楽しげな談笑が漏れてくる。
思い切って扉を開けた。雰囲気を確かめたかったのだ。
本当に小さな店だ。L字型のカウンターは満席。小上がりにも二人客が入っている。笑顔を向けてくれた、まだ若いだろう主人に訊き いた。
「スパークリングワインはありますか?」
「シャンパンなら置いてますけど」
「持ち込んでもいいですか?」
いきなり不躾なリクエストをしたのに、あっさり快諾してくれたので、すぐに翌日の予約を入れた。こうして翌夜訪れた鮨屋は、まったくもって、僕好みの店だった。それはまるで、奇跡のように素敵な時間になった。
北陸のとある地方都市。秀逸な串揚げ屋を見つけ、満ち足りて食事を終えようとして、カウンターを挟んで、店の主人と食談義となった。
鮨の旨い店を探していることを伝えると、間髪を入れずに答えが返ってきた。
「ウチの店のすぐ裏に、去年かな、鮨屋ができたんですよ」
「どんな鮨です?」
僕は即食らいついた。
「江戸前の鮨みたいです。評判もいいですよ」
江戸前鮨フリークの僕には、願ってもない話ではないか。
勘定を済ませると、主人が送りに出て来てくれた。
「よければご案内しますよ」
そう言って案内してくれたのは、まさしく串揚げ屋の真裏。
こぢんまりした構えは好感が持てる。加えて、店の中から楽しげな談笑が漏れてくる。
思い切って扉を開けた。雰囲気を確かめたかったのだ。
本当に小さな店だ。L字型のカウンターは満席。小上がりにも二人客が入っている。笑顔を向けてくれた、まだ若いだろう主人に訊き いた。
「スパークリングワインはありますか?」
「シャンパンなら置いてますけど」
「持ち込んでもいいですか?」
いきなり不躾なリクエストをしたのに、あっさり快諾してくれたので、すぐに翌日の予約を入れた。こうして翌夜訪れた鮨屋は、まったくもって、僕好みの店だった。それはまるで、奇跡のように素敵な時間になった。