
昭和60(1985)年に始まり、毎年8月7日に金春通りの路上で行われる「能楽金春祭り」。銀座金春通り会と能の金春円満井(えんまい)会が主催する。写真は今年8月「父尉」演能時のひとこま。平和をことほぐ、祭りにふさわしい祝賀の能だ。(シテ:金春安明/撮影・写真提供:辻井清一郎)

金春通りの師走
Photo Satoru Seki(P2、3)
Text Rie Nakajima
Illustration Hormone Sekine
Text Rie Nakajima
Illustration Hormone Sekine
銀座には「華」がある。常に時代の先端を走ってきたプライドと重なり合う歴史の重さが、風景に艶を与える。銀座通りはもとより並木通り、マロニエ通り、花椿通り等々、全ての通りに銀座の色香が漂い、昼も夜も銀座であることを意識させてくれる。中でも銀座の華を集めているのが金春通り。能の金春流宗家が長く住んだ由緒格式と金春芸者の粋が今も脈々と息づいている。江戸、明治からの歴史と情緒を色濃く伝える通りの土地の記憶と現在を追う。
銀座8丁目の一角で、毎年8月7日に「路上能」が行われていることをご存じだろうか。世界の一流ブランドが集まる銀座の街の、しかも路上で能を舞うとは、日本好きの外国人が聞いたら飛び上がって喜ぶような珍事のように思うだろう。だが実は、いや当然のことながら、路上能はこの銀座で行われるべき理由をもつ、伝統に基づいた行事であり、銀座が長く多様な歴史を包括した街であることの一例といえるのだ。
路上能が行われるのは、銀座中央通りの一筋西側、住所でいうと中央区銀座8丁目の6から8番地に位置する「金春(こんぱる)通り」である。
路上能が行われるのは、銀座中央通りの一筋西側、住所でいうと中央区銀座8丁目の6から8番地に位置する「金春(こんぱる)通り」である。