シカゴ郊外で誕生
ヘミングウェイは１８９９年７月21日、母グレースと外科医の父クラレンスの長男として、シカゴ郊外のオークパークに生まれた。フランク・ロイド・ライト邸でも知られる街である。一家は母方の祖父アーネスト・ホールの家に同居。１歳半年上の姉マーセリーンがいて、ヘミングウェイは母の意向で姉と同じ髪形、服装で育てられた。北ミシガンに別荘があり、夏はここで過ごすことが多かったため、父から釣りや野外での生き方を教わり、祖父アントン・ヘミングウェイからは12歳の誕生日プレゼントに猟銃が贈られた。父との北ミシガン体験は『ニック・アダムス物語』と称される短編群に反映される。一方、妻との力関係を静かに受け入れる父を見て、幼いヘミングウェイは上品な物言いの下に潜む母のさげすみを知る。医師としての父の収入は、音楽のレッスンをしていた母の５分の１にも満たなかったという事実や家柄の差がこうした力関係に至ったのであろう。
（左）サンジェルマン大通りに面したカフェ、フロールは隣のドゥ・マゴとともにヘミングウェイがよく利用したといわれる。昔ながらのカフェの面影をとどめ、観光客の人気を集めている。（右）ナポレオンがアウステルリッツの戦勝を祝って建てた円柱が立ち、ホテル・リッツがあるヴァンドーム広場。リッツの「ヘミングウェイ・バー」はカンボン通りに面している。
