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(左)クロノメーター・レゾナンス 2000年発表。二つのテンプの共振現象を利用し、精度を高めるレゾナンス機構は、アンティード・ジャンヴィエやブレゲら、歴史的時計師が大型のクロックに導入したものだが、これを世界で初めて腕時計に搭載。F.P.ジュルヌのフラッグシップ的存在。 2020年にクロノメーター・レゾナンスが20周年を迎えることを祝し、2019年の1年間のみ生産される限定バージョン。左側のインダイヤルが24時間仕様となり、デュアルタイムとしても使える。手巻き、ケース径40㎜、Ptケース×アリゲーターストラップ、10,108,800円。
(右)サンティグラフ・スヴラン2 2019年発表。100分の1秒計測が可能なクロノグラフ。10時位置に100分の1秒カウンター、2時位置に20秒で一周する秒カウンター、6時位置に10分までの分カウンターを搭載。2007年にファーストモデルが発表され、このRG仕様は今年登場。手巻き、ケース径44㎜、RGケース×RGブレスレット、9,849,600円。
ダニエルズとジュルヌ、天才時計師同士ならではの境地

 着手から5年、25歳の若きフランス人時計師がトゥールビヨン搭載懐中時計を完成させたことは、好事家の間で大きな話題となり、彼のもとに注文が舞い込むようになる。その中に、ジョージ・ダニエルズ氏のコレクターとして知られるグシュウィント氏からの注文もあった。
「ルモントワール機構を搭載したモデルの注文でした。ダニエルズ氏はすでにこの機構を完成させていましたが、私はそれとは違うメカニズムでこの懐中時計を作り上げました」
 しかしこの時計が、ダニエルズ氏とグシュウィント氏との間に、ちょっとした不協和音をもたらすことになる。
「時計に、製作者である私の名前を入れないでくれという注文だったんです。グシュウィント氏は、完成した懐中時計を他のコレクターたちにしばしば披露していましたが、ダニエルズ氏には隠していた。ところが徐々に話題になり、ダニエルズ氏の耳にも入る。しかし誰が作ったのか分からない。それがダニエルズ氏をいらだたせてしまったようなんです。当時のその経緯を含め、なぜ私があなたに感謝しなければならないか、ということを綴(つづ)った手紙を、ダニエルズ氏が亡くなる前年、2010年にロンドンでお目にかかった際に手渡しました。確か1984年にサザビーズで会った時が最初だと思うのですが、以来30年弱のお付き合いでした。ダニエルズ氏から、娘を紹介するから結婚しないか、なんて言われたこともありましたよ。すでに彼女がいたから断りましたが(笑)。ブレゲがマリー・アントワネットの依頼で作った懐中時計NO.160を二人で再現しようか、と話したこともありましたが、その時、ダニエルズ氏はこう言っていました。『すでに存在していたものを作り直すより、新しい喜びを見いだせるものを作るべきじゃないか』と。その言葉は深く心に残っていますね」
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