教官もいなければ、手本となる実機もない。自分の頭で考えるしかない中で、イギリス人時計師のジョージ・ダニエルズ氏が著した『ウォッチメイキング』と、ブレゲ研究の成果をまとめた『ジ・アート・オブ・ブレゲ』の2冊だけが指針となった。
「ジョージ・ダニエルズ氏の二つの著作は本当にすばらしいものです。時計学校では教えてくれないことがたくさん書かれている以上に、ウォッチメイキングの文化を理解するうえで極めて重要。実際、自分の最初のトゥールビヨン搭載懐中時計を製作した際に大いに参考にしたものです」
と、ジュルヌ氏も、ダニエルズ氏へのリスペクトを隠さない。
ジョージ・ダニエルズ氏は、20世紀後半以降で最も重要な仕事をした時計師の一人と言っても過言ではない。前述した2冊は、現在も時計製造や修復に携わる技術者のバイブルとなっているのみならず、氏が手掛けた懐中時計の数々は、往年の名機に優るとも劣らぬクオリティーを誇り、没後8年を経た現在も評価が高まる一方だ。オメガが採用したコーアクシャル脱進機の原理を考案した功績も大きい。
「初めて彼が手掛けた時計を知ったのは、パリで叔父が営んでいた時計工房を手伝いながら、時計学校に通っていた18歳の頃でした。叔父の顧客でもある一人のコレクターが、ベストの片方にブレゲ、もう片方にジョージ・ダニエルズの懐中時計を忍ばせていました。それを目にしてから、自分の時計を作りたいという思いが湧き上がってきたんです。だからダニエルズ氏の存在は大きかったと言わざるを得ません」
「ジョージ・ダニエルズ氏の二つの著作は本当にすばらしいものです。時計学校では教えてくれないことがたくさん書かれている以上に、ウォッチメイキングの文化を理解するうえで極めて重要。実際、自分の最初のトゥールビヨン搭載懐中時計を製作した際に大いに参考にしたものです」
と、ジュルヌ氏も、ダニエルズ氏へのリスペクトを隠さない。
ジョージ・ダニエルズ氏は、20世紀後半以降で最も重要な仕事をした時計師の一人と言っても過言ではない。前述した2冊は、現在も時計製造や修復に携わる技術者のバイブルとなっているのみならず、氏が手掛けた懐中時計の数々は、往年の名機に優るとも劣らぬクオリティーを誇り、没後8年を経た現在も評価が高まる一方だ。オメガが採用したコーアクシャル脱進機の原理を考案した功績も大きい。
「初めて彼が手掛けた時計を知ったのは、パリで叔父が営んでいた時計工房を手伝いながら、時計学校に通っていた18歳の頃でした。叔父の顧客でもある一人のコレクターが、ベストの片方にブレゲ、もう片方にジョージ・ダニエルズの懐中時計を忍ばせていました。それを目にしてから、自分の時計を作りたいという思いが湧き上がってきたんです。だからダニエルズ氏の存在は大きかったと言わざるを得ません」


(上右)ヴァガボンダージュⅠ 2004年発表。オークションハウス、アンティコルムの30周年記念として、当初3本のみが製作され、翌年以降製品化された。スライディング・ディスクで時分を示す、独創的な機構を搭載。
(上左)ヴァガボンダージュⅡ 2010年発表。1分間のルモントワール機構と連動させたデジタル式の時分表示を実現した。同機構は時計の心臓部であるテンプが振れる角度を安定させるため主ゼンマイから伝わるトルクを一定にする。
(下)ヴァガボンダージュⅢ 2017年発表。1秒間ルモントワールを応用し、6時位置にジャンピング式のデジタル秒表示を搭載した。時表示もジャンピング式。7年もの空白を経て生まれたⅡの発展形だ。左がローズゴールドケースで右がプラチナケース。
(上左)ヴァガボンダージュⅡ 2010年発表。1分間のルモントワール機構と連動させたデジタル式の時分表示を実現した。同機構は時計の心臓部であるテンプが振れる角度を安定させるため主ゼンマイから伝わるトルクを一定にする。
(下)ヴァガボンダージュⅢ 2017年発表。1秒間ルモントワールを応用し、6時位置にジャンピング式のデジタル秒表示を搭載した。時表示もジャンピング式。7年もの空白を経て生まれたⅡの発展形だ。左がローズゴールドケースで右がプラチナケース。