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ライン川はバーゼルで大きく方向を変える。白い建物は2021年の完成時にはスイスで最も高い205mとなるロシュ・タワー。
バーゼルの美術と建築を歩く
Photo & Text Chiyoshi Sugawara
スイスのバーゼルは、ライン川水運の最終遡行点として交通の要衝であり、15世紀における印刷術の発明は街を文化の中心へと押し上げた。そんな街の歴史の息吹を感じながら、美術と斬新な建築を探し歩く。
「おお、ロッテルダムのエラスムスよ、あなたはどこにいるのか。聞け、キリストの騎士よ、主キリストとならんで駆け現れ、真理を護り、殉教者の冠を得よ」
 旅の途中でルターの死を知った画家アルブレヒト・デューラーは、日記にこう記した。16世紀のマルティン・ルターらによる宗教改革の運動にデューラーは強く共鳴していた。だが、ルターの死は誤報だった。 
 16世紀前半を「エラスムスの世紀」と人々が呼んだように、1466年(異説もある)オランダ生まれの人文主義者デジデリウス・エラスムスは当時の思想世界の指導者として君臨し、聖職者たちの偽善を暴き風刺した『痴愚神礼讃(ちぐしんらいさん)』は大ベストセラーとなるが、教会から敵視され発禁処分を受けた。ルターはその著作に影響を受け、宗教改革は「エラスムスが生んだ卵を、ルターが孵化(ふか)させた」と言われた。しかし過激に改革を進めるルターに対し、穏健なエラスムスは次第に距離を取り対決。その一方、反ルター政策に加担させられることを避け、1521年、バーゼルに向かう。教会を内部から改革しようという志はバーゼルの司教も同じであった。当時のバーゼルは印刷・出版業が盛んな文化の中心地で、エラスムスの肖像を始め多くの宗教画や肖像画を手掛けた画家ハンス・ホルバインもここで活躍していた。
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