
名古屋人のお値打ち好き気質に
訴求したモーニング
名古屋でモーニングが一般化したのは、冒頭に挙げた店の多さに理由がある。
名古屋は大都市の割に土地代が安く(近年はそうでもないが)、客単価の低い喫茶店でも開業しやすかったのが店数が増えた一番の要因といわれる。結果、競争が激しくなり、店はあの手この手で客を獲得しようとサービスの充実を図る必要があった。コーヒーにピーナッツなどのおつまみを付けたり、新聞や雑誌を数多く揃えたり。モーニングが誕生・普及したのは昭和30~40年代。ちょうど喫茶店の開業ラッシュとも重なり、増え続けるライバル店との差別化策として各店がこぞって採用したのだと考えられる。
名古屋人は実利主義で、その気質を表わす言葉が“お値打ち"。いわゆるコストパフォーマンスの高さを指し、ブランドイメージなど目に見えない付加価値よりも分かりやすい質量のサービスを好む傾向がある。喫茶店のモーニングは、まさにそんな“お値打ち第一主義"にかなってヒットしたサービスと言える。
朝から晩までモーニング
喫茶店以外の飲食店にも普及
広く一般化することで、様々な内容や分野のモーニングも生まれた。
例えば「フルタイムモーニング」。一部の店が採用しているもので、モーニングといいながら、一日中コーヒーにトーストなどのおまけが付いてくる。これはすなわち、「モーニング」が「朝の時間帯のおトクなサービス」という本来の意味から離れて、「喫茶店のあれこれ付いてくるおまけサービス」を指す言葉として拡大解釈されている証である。
また、喫茶店以外でもモーニングを実施している店も少なくない。ベーカリーでのパン食べ放題や、コーヒー付きの定食といった方がふさわしいような、うどん店や食堂でのモーニングなどなど。
コーヒー1杯プラスαで、朝からちょっとおトクな気分になれる。名古屋のモーニングはおなか以上に心を満たしてくれる朝ごはんなのだ。