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「旨い!」を極める名料理人、徳岡・神田両氏。
話は尽きることなく、鼎談後に京都の人たちの“台所”錦市場へ。買い物客に交じってのぶらり歩きに満面の笑み!
京都には水と土の
アドバンテージがある――神田裕行

どこで料理する時も
京都の水を使います――徳岡邦夫
料理の洗練の源泉はお客さん

【山下】 接待なんかで面白いと思うのは、いい意味で「うるさいお客さん」が多いこと。例えば、前と同じ値段の料理でも、気に入らないと「今日のは高い」とおっしゃる。それは大事なことだと思うけど。

【神田】東京のお客さんはたぶん、気に入らなくても何も言わないけど、二度と来ない。京都は東京よりちょっとコミュニティーが小さいから、他へ行くより、うるさいことを言うてでも、育てていこうと思うのではないでしょうか?

【徳岡】そうかも。僕も若い頃、特に料理長になりたての時は、よく座敷に呼び出されて、「おじいちゃんはな」って話をとくとくとされて。でも、毎月来てくださる。代々長いお付き合いをさせていただいてます。

【神田】代々はないんだけど、うちで難しいのは、ミシュランのおかげで外国のお客さんが増えたことです。例えば、中国から見えた老夫婦とアメリカのビジネスマンと、同じ料理を出したらバカでしょ? そういった国によって違う嗜好に、どれだけ応えられるかが一つのポイントになります。万人においしい料理はありえませんから。

【徳岡】本当にありえないですね。

【神田】まぁ、そこが面白くて、僕はカウンターに立ってるんですが。

【山下】結局、お客さんの反応が大事なんですね、料理人さんは。

【徳岡】もちろん。水も食材も気候や環境で変わりますから、常に「ここのがいい」というのはない。自分たちでチェックして、お客さんの反応も見て、臨機応変に変えていかないと。だから「原料はいつも違うぞ。毎日、同じことをするなよ」というのが調理場の合言葉です。

【神田】うちでも料理の基本はそこだと思ってます。

【山下】ところで、京都では天然のいい砥と 石いしがとれるそうです。愛宕山に近い所で。砥石があれば、いつも切れ味のいい包丁を使えますね? その部分でも、料理人は京都に引き寄せられたんじゃないでしょうか。

【神田】でも何より、御所を中心に偉い方がたくさんおられたから、優れた料理人が集まった。彼らが腕を競う中で、味も洗練された。今となっては、「旨い」を求めて大勢の観光客が来るわけで、店も料理人も増え、質も上がるのは道理です。そもそも平安京になった時点で……

【一同】京都は豊かな水と土に恵まれた、選びに選び抜かれた土地なんですよね。
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