
この寺院で有名なのは、現存する最も優れたものの一つといわれるタイ古典様式の壁画だ。タイの仏教壁画は、何をどこに描くか詳細に決められており、それに従って、仏陀の一生や天上人の行列、仏教の教えにある三つの世界と地獄の風景、仏陀のマーラ(煩悩の化身)に対する勝利などが描かれている。宮殿や町、実在あるいは宗教上の人物や生物が、その表情まで細やかに描き込まれており、日本との文化的な違いもあって、見入ってしまう。すべての絵が俯瞰(ふかん)の目線で描かれているのも特徴で、天上人や貴族は高貴に、庶民はコミカルなほど現実的というか、少々不格好に表現されている。