投資家心理が不安に傾いた場合、大いに気になるのは米国で過去最高レベルにまで積み上がっている証拠金債務(マージン・デット)の存在である。かねて、米市場では借入金による株式取引が空前の規模で行われており、今ネット上では「過去最高のマージン・デットは米株バブル破裂の前兆」などとする見解が目立つ。ネット上の見解を鵜呑みにすることは、憚られるものの、実際にニューヨーク証券取引所(NYSE)が公表しているマージン・デットの残高は、昨年の7月末にリーマン・ショック前の最高値であった07 年7月末の3813 億ドルを超え、今年2 月末には4657 億ドルとかつてない水準にまで膨張した。
その後、マージン・デットの残高は一旦やや縮小傾向を辿ることとなったが、あらためて確認すると6 月末時点では4643 億ドルに再び膨れ上がっており、これは前述した過去最高水準(2 月末の4657 億ドル)に迫る。ここで、借入金に依存した膨大なポジションの巻き戻しが生じるとなれば、今後、米株価が急激かつ大幅に下落する可能性は否定し得ないものとなろう。
NYダウが一時的にも大きく調整すれば、当面はドル/ 円の上値も抑えられやすくなるものと見られる。今秋に向けて金融市場が多少なりとも不安定化するときがあるならば、そうした事態が一定の収束を見ない限りは1ドル=104.13 円、105.44円などといった過去のドル/ 円の高値をすんなり上抜けることは難しいだろう。むしろ、波乱の渦中においては今年2 月につけた安値=100.75円を一旦は下回る場面があってもおかしくはない。もちろん、仮にそのような場面があった場合、それはドルを安く手当てする絶好の機会であると捉えたい。
その後、マージン・デットの残高は一旦やや縮小傾向を辿ることとなったが、あらためて確認すると6 月末時点では4643 億ドルに再び膨れ上がっており、これは前述した過去最高水準(2 月末の4657 億ドル)に迫る。ここで、借入金に依存した膨大なポジションの巻き戻しが生じるとなれば、今後、米株価が急激かつ大幅に下落する可能性は否定し得ないものとなろう。
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(左)たじま・ともたろう 金融・経済全般から戦略的な企業経営、個人の資産形成まで、幅広い範囲を分析、研究。講演会、セミナー、テレビ出演でも活躍。 www.e-minamiaoyama.com
(右)THIS MONTH RECOMMEND
まずはローカル経済の伸びしろに注目!
本書では、G(グローバル経済圏)の世界とL(ローカル経済圏)の世界とを、ひとまず区分して観察し、それぞれの問題状況を考えている。そのうえで、とくに著者が重視しているのは「Lの世界には集約化による労働生産性向上の伸びしろがある」という点だ。「既に世界的に高水準にあるGの世界の生産性を上げるより、Lの世界の伸びしろを生かす方が政策的な効果は高い」との指摘は目から鱗うろこであり、具体的な提案内容も実に興味深い。
「なぜローカル経済から日本は甦るのか」(冨山和彦著/PHP研究所/842円)
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