盗まれた接吻
まるで映画のワンシーンのような「盗まれた接吻(せっぷん)」。タイトルに“盗まれた"とある通り、青年が“不意打ち"で意中の女性に仕掛ける瞬間を見事に描いている。女性はほとんど抵抗せず、青年に身を寄せキスを受ける。それより女性は、この瞬間を誰かに見られてはいないかと、“周りの目"を気にしているようだ。青年の彼女への思いや、不意を突かれた驚き、そしてキスを予想していたかのような仕草といった男女の戯れを、ロココ的に描いている。この作者、ジャン=オノレ・フラゴナールはヴァトーの後継者だ。フラゴナールの義理の妹で弟子のマルグリット・ジェラールとの共作説が有力な作品。

ジャン=オノレ・フラゴナールとマルグリット・ジェラール 《盗まれた接吻》 1780年代末
ⒸThe State Hermitage Museum, St Petersburg, 2017-18
ⒸThe State Hermitage Museum, St Petersburg, 2017-18