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誘う女、誘われる女
Text Nile’s NILE



いつの時代も恋の駆け引きがあった。その微妙な瞬間を17世紀から18世紀にかけて活躍した西洋絵画の巨匠(オールドマスター)たちが軽妙に描いている。美貌を武器に誘う女、力強く迫る男に誘われる女―しかもこれらの作品は、フランス語で“隠れ家”の意味を持つエルミタージュ美術館に隠されていると聞けば、見てみたくなる。実はこの春、エルミタージュ美術館が所蔵するオールドマスターの傑作がやって来る。今まで“隠れ家”だけで行われていた恋の駆け引きを見に行こう。
 男女の微妙な恋の駆け引きを絵画のモチーフに、それを得意とするオールドマスターがいた。「困った申し出」の作者、アントワーヌ・ヴァトーである。彼は、ルイ14世とベルサイユ宮殿に象徴されるバロック時代が終わり、続くルイ15世の治世の享楽的なロココ時代の初頭に生まれた。「重厚長大」なバロックとは対照的な「軽薄短小」のこぢんまりとしたロココ絵画、中でもフェート・ギャラント(優雅な宴)と呼ばれるジャンルの創始者として知られる。フェート・ギャラントとは、貴族など上流階級の男女の集いを描いたもので、庭や公園を舞台にピクニックや音楽、とりわけ恋のささやきがモチーフとなっている絵画を指す。

困った申し出

 “攻め"の男と今一つ煮え切らない女性――これもフェート・ギャラントの一つといえる、外での恋の駆け引きである。微妙かつ軽妙に、男女の心理描写をもしている「困った申し出」は、ヴァトーならでは。軽快で優美、遊び心あるロココ美術が開花した時、キャンバスの中では、永遠の恋のささやきが始まったようだ。
アントワーヌ・ヴァトー 《困った申し出》 1715~1716年 ⒸThe State Hermitage Museum, St Petersburg, 2017-18
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