
サルバドール・ダリ《見えない人物たちのシュルレアリスム的構成》1936年ごろ ガラ=サルバドール・ダリ財団蔵
Collection of the Fundació Gala-Salvador Dalí, Figueres
ⒸSalvador Dalí, Fundació Gala-Salvador Dalí, JASPAR, Japan,2016.
Collection of the Fundació Gala-Salvador Dalí, Figueres
ⒸSalvador Dalí, Fundació Gala-Salvador Dalí, JASPAR, Japan,2016.
原子爆弾の衝撃
そんなダリは戦後、大きな転換期を迎える。きっかけになったのが45年の広島と長崎への原爆投下である。
「原爆は核分裂の原理に基づいてつくられたものです。ダリはその原理そのものに関心を持ちました。原子レベルで見ると、物質は原子核の周りに電子が距離をもってとりまいている。そういう目に見えない原理が物質を、ひいては世界を崩壊させる爆発力をはらんでいることに、深い衝撃を受けたのです。シュルレアリスム時代に依拠していた無意識が量子力学に取って代わった、という見方もできます。
この時代の作品には、物質がすべて空中に浮き、小さなパーツに粉砕されるイメージが表現されています。興味深いのは描写力が変化してきたこと。夢の中の世界をほうふつとさせる絵を描いたシュルレアリスム時代と違って、リアリティーが色濃く感じられます。ありえないものを現実にあるように描く、その細かい写実によって画力が一層研ぎ澄まされたように感じます」
「原爆は核分裂の原理に基づいてつくられたものです。ダリはその原理そのものに関心を持ちました。原子レベルで見ると、物質は原子核の周りに電子が距離をもってとりまいている。そういう目に見えない原理が物質を、ひいては世界を崩壊させる爆発力をはらんでいることに、深い衝撃を受けたのです。シュルレアリスム時代に依拠していた無意識が量子力学に取って代わった、という見方もできます。
この時代の作品には、物質がすべて空中に浮き、小さなパーツに粉砕されるイメージが表現されています。興味深いのは描写力が変化してきたこと。夢の中の世界をほうふつとさせる絵を描いたシュルレアリスム時代と違って、リアリティーが色濃く感じられます。ありえないものを現実にあるように描く、その細かい写実によって画力が一層研ぎ澄まされたように感じます」