
鯛かぶら椀
冬の鯛は脂が強いので、冷水に落とし、しばしさらして脂を抜く。潮(うしお)仕立ては心持ち塩を効かせて、かぶらの甘みを引き立てる。
冬の鯛は脂が強いので、冷水に落とし、しばしさらして脂を抜く。潮(うしお)仕立ては心持ち塩を効かせて、かぶらの甘みを引き立てる。

椀味不只淡 第20回
文・神田裕行(元麻布「かんだ」店主)
Photo Masahiro Goda
Photo Masahiro Goda
神田裕行の椀五十選 第20回
「和食=日本人の伝統的な食文化」が、ユネスコの無形文化遺産に登録されることが決まった。まずはうれしく、誇らしい。この機会に「和食」と「日本料理」について考えてみようと思う。
和食の「和」の起源をたどると、そもそも古来、我ら大和人は自分のことを「わ」と呼んでいたらしく、これに中国人が「倭」という字を当てはめ「倭人」と呼ばれたそうな。しかし「倭」という字は「人に委ねる」という意味合いがあり、これを蔑称と捉えたのか、いつからか「和」の字を当てはめることになった。
「和」は「和(あ)える」や「和(なご)む」という意味にも使うことができるが、まさに「和食」はそれこそが本質であると思う。時代の移り変わりの中で、新しい食習慣になじみ、新たな食材を取り入れ、新しい価値観で生きる人たちにも寄り添い、変化し、進化してきたことこそが「和食」の道であったと思う。
例えていえば、ガスがなかった時代に庶民は「天ぷら」を食べてないし、冷蔵庫や車が普及する以前に「おさしみ」を食べたはずもない。今、現存の「和食」とは実は、つい最近生まれたものなのだ。
日本の近代化がそのまま「和食」を近代化させ、日本人の勤勉さがそれに精緻(せいち)さを加えたのだ。「和食」は、文節の中に漢字、ひらがな、カタカナ、はては英単語まで取り入れて違和感のない現代日本語と同じ性質で発展してきたのではないだろうか。
和食の「和」の起源をたどると、そもそも古来、我ら大和人は自分のことを「わ」と呼んでいたらしく、これに中国人が「倭」という字を当てはめ「倭人」と呼ばれたそうな。しかし「倭」という字は「人に委ねる」という意味合いがあり、これを蔑称と捉えたのか、いつからか「和」の字を当てはめることになった。
「和」は「和(あ)える」や「和(なご)む」という意味にも使うことができるが、まさに「和食」はそれこそが本質であると思う。時代の移り変わりの中で、新しい食習慣になじみ、新たな食材を取り入れ、新しい価値観で生きる人たちにも寄り添い、変化し、進化してきたことこそが「和食」の道であったと思う。
例えていえば、ガスがなかった時代に庶民は「天ぷら」を食べてないし、冷蔵庫や車が普及する以前に「おさしみ」を食べたはずもない。今、現存の「和食」とは実は、つい最近生まれたものなのだ。
日本の近代化がそのまま「和食」を近代化させ、日本人の勤勉さがそれに精緻(せいち)さを加えたのだ。「和食」は、文節の中に漢字、ひらがな、カタカナ、はては英単語まで取り入れて違和感のない現代日本語と同じ性質で発展してきたのではないだろうか。

蟹たま雑炊椀
ズワイ蟹の身をほぐし出して煮て味を調え、薄く葛を引いた後、溶き卵を加える。卵は完全に火を入れないのがコツだ。よく混ぜながら溶き卵を流し入れるのがいい。
ズワイ蟹の身をほぐし出して煮て味を調え、薄く葛を引いた後、溶き卵を加える。卵は完全に火を入れないのがコツだ。よく混ぜながら溶き卵を流し入れるのがいい。