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蓮根饅頭青葱辛子
浪花割烹の定番とも言うべき料理。もちもちとした食感を得るためにはひたすら汗をかき、渾身の力で練り上げるしかない。
椀味不只淡 第2回
文・神田裕行(元麻布「かんだ」店主)
Photo Masahiro Goda
神田裕行の椀五十選 第2回
 百椀の王にして日本料理屋の夏の定番である「牡丹鱧煮物椀」。
 最近は韓国産のハモも良品が多いというが、潮の流れの速い外海のハモよりも、内海の紀伊水道のそれの方が、骨も身も皮も柔らかい良品だと感じるのは、地元が徳島であるゆえの身びいきだろうか。
 この時期、“料理人の定番仕事"と言えるのが、ハモの骨切りだ。白く輝くハモの身の、1寸(約3㎝)に26筋入れたら一人前という、言ってみれば“都市伝説"があるのだが、恐らくこれは、包丁より薄い刃で繊細な作業ができる手術用のメスを使っても、不可能な数値である。実際に3㎝幅に何筋入れられたか数えてみたら、私は13筋。とんでもない半人前だ。
 700gのハモの良いところだけを10㎝程骨切りして、両面にうす塩を当てて、身の方にだけ細かくふるいにかけた葛を打つ。
 二つの鍋にたっぷりと湯を沸かしておいて塩を入れ、まず一の鍋にハモを落とし、浮き上がってきたら二の鍋に移し、濁りを清める。丹念に湯切りをした後、椀に盛り、一番出汁を注ぐ。
 吸い口は青柚子――、初夏の定石は梅肉――。
 真っ白なボリュームあるハモの上に真っ赤な梅肉でおしべを描けば、椀の中に牡丹の花が咲く。
 そして、盆を過ぎれば、松茸を迎えて「鱧松椀」。この時ばかりは、かつお出汁の香りがうるさく感じるため、洗いざらしたハモの中骨で取った出汁を上とする方がいい。
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