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1.フキ、コゴミ、ツクシと春の芽吹きを感じる山菜と、菜の花を用意。
2.筍を出汁で煮て、下味を付ける。
3.筍を煮た出汁で山菜と菜の花、若布、油揚げを煮る。
4.猪の肉は良質な脂がたっぷりと乗ったロース。
5.クレソンは“天然のもの”を使い、こちらも早春をイメージ。
6.聖護院かぶを下ろしたものも、汁に加えて煮る。
 ちなみに、買い求める時の注意点としては、筍の先だけが茶色いものを選ぶべきである。全体が茶色いものは、土中から完全に出て太陽を浴びた証しであるため、既に竹になるために繊維が硬化し始めていると考えた方がよい。ゆえに、なるべく土中のものを掘り起こした白いものを選びたい。
 筍掘りの名人は、実は人間だけではない。
 芽吹き前の柔らかい筍を、誰よりも早く食べているのは猪だ。スペインの黒豚はどんぐりを食べて育つようだが、日本の猪は筍が大好物で、山の中を探し回っては掘り起こし、皮ごと食べてしまうそうである。良い筍がある場所には、猪がいるそうで、人間の名人たちは猟銃を持って山に入るという。まさに命懸けの初物競りだ。
 筍はぬかで湯がいてあくを抜き、流水にさらして、ぬかを抜く。かつおぶしを効かせた出汁で炊けば、それだけで春爛漫の、ごちそうとなる。出合いは、木の芽と若布で若竹煮が定石だが、春満載の山菜椀とした。猪も友情出演ということで、椀仕立てとした。いくぶん野生の香りのする猪には、天然のクレソンを合わせて、香りを相殺。山の香りには、山の香りを。春は香り高く、ほろ苦くがテーマである。

元麻布「かんだ」
東京都港区元麻布3-6-34 カーム元麻布1F TEL03-5786-0150
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