PAGE...1|2
1.ホワイトアスパラガスは太い部分を厚めに皮をむき、一緒に湯がく。
2.アスパラガスの水分を布巾などでしっかり除き、軽く葛粉をまぶす。
3.すり身に湯葉を多めに混ぜ、アスパラガスも入れて手で丸め、ふかす。
4.アワビは塩をしてタワシで表面を洗う。グリーンアスパラガスは皮をむかずに使う。
5.アスパラガスをそのまま素揚げにして、氷水で冷やして油抜きをする。
6.アスパラガス、ウズラの卵、葛をまぶしたアワビを葛で煮る。
 ホワイトアスパラガスは、その生い立ちゆえに柔らかくジューシーで土の精のような神秘的な香りが魅力だ。西洋ではゆでてオランデーズソースが定法だが、今回はしんじょに仕立ててみる。しんじょとは、魚のすり身をベースにした練り物の総称なのだが、アスパラガスとすり身を取り持つもう一つの要素が必要だろう。まず、皮をむきかつお出汁で煮るが、この時むいた皮も一緒に入れる。皮から思いもよらぬほど「出汁」が出るからだ。濃厚なうまみの出た出汁を味見してひらめいた。「湯葉」をこの出汁で炊いてみたらどうか。案の定、湯葉からもうまみが出てこの上ない出汁となった。これに卵黄を加え、すり身を伸ばしてアスパラガスを一口大に切り、まとめて蒸し上げた。どうやら令嬢に和服を着せられたようで安心したが、いかがか。
 グリーンアスパラガスは素揚げするとうまみと香りが凝縮して一層おいしくなる。皮をむいたり、はかまを取ったりするのも面倒だ。190℃の油に約2分何もつけずに放り込む。うっすらと焦げ目がついたら上出来だ。冷水に落とし、油をぬぐい、香りをかぐとうっすらとトリュフの香り。なるほど、グリーンアスパラガスにトリュフ料理が多いのはそのせいか。しかし、トリュフこそはカタカナ野菜の王様にして日本料理の禁じ手と疑わぬ私には使うことは考えられない。「海苔」を使おう。色、味、香りの三つの要素を持つこの海の名品に黒アワビを合わせて初夏の椀盛りとする。素揚げして余分な水分を抜いたグリーンアスパラガスの香りは男性的な魅力にあふれている。そういえば、昔読んだフランスの食物史にアスパラガスについての表現があった。「アスパラガスには性的高揚を促す成分があるとされ、14世紀フランスの修道院の若い女性の食卓に出すことは禁じられていた」。やはり、うまいものにはエロスが漂うのだ。

元麻布「かんだ」
東京都港区元麻布3-6-34 カーム元麻布1F  TEL03-5786-0150
PAGE...1|2
LINK
GOURMET
元麻布 かんだの旬椀 ―春~初夏
>>2015.6.17 update
STYLE
会員特別イベント at 「ハイレーゼ三軒茶屋」
>>2009.6.5 update
GOURMET
椀味不只淡 第5回
>>2013.12.24 update
GOURMET
椀味不只淡 第15回
>>2013.12.16 update
GOURMET
椀味不只淡 第16回
>>2013.12.13 update

記事カテゴリー