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取材のために、工房に入るには、塵や埃が極力入らないよう特別な白衣を着て、靴にもカバーをして、髪の毛、耳がすっぽり隠れる帽子までかぶって見学。工房の組立・調整部門を率いる、全国に3人しかいない「いわて機械時計士のIWマイスター」のお一人、伊藤勉(いとう つとむ)さん。伊藤さんたち職人が作業されている机は、地元岩手の伝統工芸品、岩谷堂箪笥製のもの。工房の特注で、一人ひとりの体型に合わせてサイズも選べる。
 クオーツ時計については約20-50部品の組立で完成するのに比べて、機械式時計の場合、最小で0.3mmほどしかない約220-230の部品をひとつずつ組み立てていく作業になり、根気と長年の経験による職人技が必要となる。とくに今回50年ぶりに開発された婦人用のムーブメント。婦人用は紳士用に比べて小さい分、すべての部品も小さく顕微鏡で覗きながらの目が痛くなるような作業。また精度を高めるための調整→テスト→調整→テストを繰り返し、検定試験では17日間いろいろな角度で時間の進みや遅れを確認されて、完成するまでにはおよそ3-4ヶ月かかるようだ。伊藤さんが実際に使用している工具をみせてもらった。すべて自分の手に合わせて、使い易いように先端を自分でけずり、ピンポイントで小さな部品をもつかめるように工夫していくのも、個人の裁量だそう。
 その後、工房を出て向かった先は、組み立て体験をする実習室。グランドセイコーに実際使用されているキャリバー9Sというムーブメントを組み立てることに。あまりに細いので、顕微鏡を使っての作業。部品一つ一つをつかむのも一苦労だったが、実際に組立が完了し、ムーブメントが動き出すと、まるで止まっていた心臓が再び動き出したかのような感動さえ覚えた。
(上)ガラス越しに見える「雫石高級時計工房」内。
(下)部屋で作業をしているのは、機械式腕時計を生み出す精鋭の職人たちだ。
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