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松茸のにゅうめん
湯がいたそうめんに、松茸の軸を細切りにしたものを混ぜ込んでいる贅沢なにゅうめん。夏の風物詩である鱧で出汁を取り、さらに松茸の傘の部分もふんだんに載せた椀は、夏から秋への優雅な移ろいを感じさせる。

椀味不只淡 第16回
文・神田裕行(元麻布「かんだ」店主)
Photo Masahiro Goda
神田裕行の椀五十選 第16回
松茸の季節がやってきた。
 丹波、京都産はもちろん、岩手、長野産も素晴らしい。杉花粉に覆われて劣勢ではあるが、日本の秋の味覚の王者はまだまだ健全であると願う。
 炭火で焼いてすだちを搾り、口に含めば馥郁たる香りと芳醇な汁があふれ出す。松茸の真価はこの水分であり、しからば焼く場合は濡れ紙を巻き、水分を閉じ込めて焼く。煮物椀にする場合は薄く切り吸い地でさっと煮仕上げるが、この時の吸い地は、上品な一番出汁だと少し弱い。松茸は良いものほど、エキスがたくさん出て、出汁の力が弱まるからだ。
 「かんだ」では、松茸を入れた煮物椀の出汁は、鱧の骨で取る出汁だ。
 三枚に下ろした鱧の頭や骨を淡水にさらし汚れを取り去ったものを、昆布と一緒に鍋に入れ、名水を張り、水量の3割の酒を加えて火にかける。魚介類の骨などは、こうして必ず水から火にかけ、徐々に温度を上げていく。ゆっくりと温度が上がってくると、昆布のぬるっとした部分と鱧の“あく"がうまく化合し、あくが固まりやすく、結果、きれいな澄んだ出汁が引けるのだ。
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