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 我が京都を始め、かつては地方の江戸前鮨と言うと、なぜかネタが大きいのを特徴としていて、江戸前の素材を使うわけでもなく、ましてや江戸前の技法とは無縁だった。しかし近年になって、地方においても江 戸前の仕事を施した、真っ当な鮨屋が暖の 簾れんをあげ、鮨好き、旅好きの舌を喜ばせている。
 例えば博多。エネルギッシュな街に、何軒もの鮨屋が鎬しのぎを削っている。地方の鮨屋が愉しいのは、江戸前の技法をベースにしながらも、ネタを含めて地方色をも加えているところだ。JR博多駅からほど近い「安吉」などがその代表。
 おまかせで頼むと、ひと口サイズの酒しゅ肴こうが次々と繰り出され、それが十皿ほど続くと握りに切り替わる。九州ならではの焼酎でもいいが、あえてシャンパーニュと合わせる。夏ならシンコに蒸しアワビ。春先には煮ハマ。小ぶりの握りを摘つまんでいると、ふと、ここは西麻布だったかと錯覚してしまう。
 あるいは岡山の郊外に店を構える「ひさ田」。十年ほども前に初めて訪ねたときは、狸たぬきに化かされたかと思うほどの辺境の地に立つ鮨屋。ここもまた、江戸前の技法を守りながら も、常に革新的な進化を遂げ、カウンターを挟んで主人と向き合う時間は、東京では得難い伸びやかな空気 に包まれる。
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